2010年6月23日水曜日

愛甲猛、「球界の野良犬」:その3

昨日に引き続き、『球界の野良犬』より落合博満関係のエピソードを紹介。

「こんなこともあった。キャンプ初日『タケシ、バット貸してみろ』と言われ、おろしたてのバットをオチさんに差し出した」
「『なんだ、こんなの使ってるのか。いらねえだろ、こんなの』。そういうと、オチさんは火鉢にバットを入れた。何するんだこのやろう、と思ったが、それも親心だった」
「機械で大量生産されたバットで満足するな、とオチさんは言いたかったのだ」(93頁)

結論だけをズバっと言い、即、行動に移す。結論に至るまでの思考過程は相手に考えさせる――というスタンスでモノを言う落合らしいエピソードだ。こうしたコミュニケーションは、落合と交流のない(あるいは落合に興味のない)大多数の人間には全く通じないものだ。愛甲にしても一番弟子だからこそ真意に気づけたのだろう。手前が同じことをされたら、ただ腹を立てて終わっていたかもしれない。

「ロッテに劔持貴寛さんという選手がいた。オチさんとは同級生で仲が良く、六本木で飲む約束をしていたらしい。先に女性を連れてきていた劔持さんに、オチさんはこう言った」
「『なんだ劔持、また違う女か』」
「傍らの女性は劔持さんの奥さんだった。オチさんに紹介するべく連れてきたらしい」
「それが理由か定かではないが、その後、劔持さんは離婚している。『俺のせいで離婚したんだよなぁ』とオチさんは苦笑していた」(95頁)

「『昨日、家に帰ってカミさんとテレビ見てたんだよ。いつしか『トゥナイト』(テレビ朝日で放映されていた深夜帯の情報番組)が始まってな。山本晋也監督がソープ取材してたんだよ。画面に映った子、見たことあるな、なんて思ったら、『落合さーん、また来てね』なんて手を振りやがった。続けて山本監督が『さすが落合さん、夜も三冠王ですな』だってさ。チャンネル回し損ねたよ……』」(95頁)

ここら辺のエピソードは、いうまでもなく落合の著書には載っておらず、類書にも書かれていていない。なお、落合の好みは“玄人”で、試合が終わると川崎球場近くの堀之内に直行していたらしい。

なお、この辺の話は信子夫人の著書『悪妻だから夫はのびる』(光文社)にも書かれている。

「浮気の話が出たついでといってはなんですが、以前私は、落合に、『ちょっと、ヒロ、私が浮気したらどうする? キミは、遠征先とかでソープランドへ行ったりしているんでしょう。ねぇ、どうなの?』と聞いたことがあるのです」
「すると、落合は、『ソープランドが浮気かよ!』と言って開き直ったのです」
「さらに、落合は、『性処理ならいいじゃねえか……』とこうきたのです。この男は、ひょっとすると私の想像をはるかに超えた大物かもしれない、と私は、ますます脱帽したわけです」
「と同時に、落合がそこまで開き直って――まかり間違えば、私に首を締められて半殺しにされかねない危険を顧みずに――言うからには、ソープランドというのは、さぞやおもしろいところだろうと思った私は、それをわが家でやってみようと思い立ったのです」(168~169頁)

この夫にしてこの妻ありというか、落合が大物なら信子夫人はラスボスというか……。落合が買ってきた男性週刊誌を“教材”に勉強し、夫婦生活についていかに研究不足かを思い知らされた信子夫人は、耳学問ながらソープの技術をマスター。そのうえで、「あとで、ソープランドごっこしてあげるからお客さんになりなね」(169頁)といったそうだ。これを機に、落合のソープランド通いはピッタリおさまったという。
(つづく)

2 件のコメント:

  1. 愛甲本からの落合ネタありがとうございます。落合ソープネタって微笑ましいですよね。こういう所はイチローにはないもんなあ。

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  2. こういう話が出てサマになるキャラは、良くも悪くも清原和博の世代までなんでしょう。中村紀洋がこういうキャラの後継者になるかと思ったんですけどね。

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