2010年6月24日木曜日

愛甲猛、「球界の野良犬」:その4

昨日まで紹介した落合博満関係のエピソードは、221ページの同書のうち9ページを占めるだけのものだ。当然のことながら、落合関連以外のプロ野球関係のエピソードは年俸更改、10.19、カネヤンなど興味深いものが数多く掲載されている。全てを引用していてはキリがないので、以下、読書メモ形式で紹介することにしたい。

・村田兆治は、公式戦で常にノーサインで投げていた。あるときタイムリーを打たれた村田がベンチで袴田英利に一言「あんなの要求しやがって!」と。ロッカールームに村田が消えた後、袴田曰く「……ノーサインじゃねぇか」。

・その村田がコーチやトレーナーと雀卓を囲んでいたときのこと。2度も3度も放銃した村田が「てめえこの野郎!」と突如コーチに麻雀牌をぶつけた。牌をぶつけられた年上のコーチは金がもらえるなら我慢するという顔。鬼のように自分勝手だった。

・10.19。最下位が決まっていたので自分の成績だけを考えていた。調子も悪くないし3割目前。.299と.300では天国と地獄。打ち気マンマンだったが、セカンドを回ったとき大石大二郎から「愛甲、今日だけは勘弁してくれ」と言われ、モチベーションが下がってしまった。優勝を目指す近鉄ナインの気持ちが痛いほど理解できたからだ。

・あの試合で流れを変えたのは、仰木彬監督の一言だったと思っている。ロッテの佐藤健一が自打球を膝に当てたとき、骨折するほどのケガだったにも関わらず、ケガの心配もするでもなく「痛かったら代われば……」と無神経な一言。それを聞いた有藤監督が激怒。ナインも「絶対に勝たせるな」と団結した。

・タイトル争いでは、本人にタイトル料が出るだけでなく、コーチにも「タイトルホルダーが出たらいくら」という契約もある。

・金田正一と園川一美は、とことん相性が悪かった。試合開始前、園川がマウンドに歩み寄っている最中に、「トク、ブルペン用意しとけ! 歩き方がおかしい」と。投球練習すらしていないのに。

・相手チームのビーンボールに怒った金田。キャッチャーの福澤に「福澤、顔に行かんか顔に!」と叫ぶ。呆れた主審に「カントクを何とかしろよ」と呟かれた福澤曰く、「退場でしょ。お願いですから退場にしてください!」。

・もっとも影響を受けたコーチは高畠導宏。コーチングは独特で、真後ろからトスされたボールを目の前に落ちてくる瞬間に打つという練習をさせられた。結果、ミートポイントを的確につかめた。投手の癖や球種を読むテクニックを授けられた落合は、高畠から打撃を教わった翌年、首位打者を獲得している。

・原辰徳は神奈川の先輩であり、同じ年のドラフト一位同士。ゴルフコンペ中、原に「タケシ、お前、契約金いくらだった?」と尋ねられ「4800万円です」と答えた後、「原さんは、8000万円でしたっけ?」と逆に聞いたら、「うん、手取りでね」(愛甲の本には書いていないが、ONの年俸も手取りだったといわれている)。

・野球教室のギャラは10万円。一日拘束としては大した金額だと思ったので二つ返事で引き受ける。が、当時の巨人は二軍でも30万円だったという。袴田がスポンサーに頼まれ、法政でバッテリーを組んでいた江川卓に野球教室参加の声をかけた。ギャラは50万円だったが江川曰く「家で寝ていたほうがいい」と。

このほかにもスパイ野球、ドーピングについても赤裸々に語っているが、この辺のところを知りたい方は、是非、本書を手にとって貰いたい。

なお、愛甲は現在、このようなビジネスもやっているようだ。現役時代の写真がカードや雑誌などの切り抜きっぽいところがもうね……。でも、もう少し懐が暖かかったら間違いなく買っているだろうなぁ。落合が同じようなのを出したとしたら? そんなの100万円でも買いますよ!

追記:昨日、仕事で懐かしい場所に行き、懐かしい人に会い、懐かしいアイスコーヒーをごちそうになる。久しぶりに懐かしい話ができてよかったんだけど、10年ぶりくらいに会ったのに「痩せた?」の一言だけを貰えなかったことに少々ヘコむ。やっぱり男のダイエットって30kgくらい痩せてもルックスには顕著にあらわれないものなのかなぁ。

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