2014年7月15日火曜日

アメリカや中共のプロパーでも工作員でもない人の説く「2014年の東アジア情勢」を知ろう

◆タイトル:『兵頭二十八の防衛白書2014』

◆目次

●Ⅰ部――わが国を取り巻く国際情勢
・第1章:米国 軍事予算大幅カットの趨勢
・第2章:中国 「軍による国の支配」と「間接侵略」
・第3章:ロシア 頼れるのは特殊部隊のみ
・第4章:朝鮮半島 北朝鮮をめぐる9つの疑問

●Ⅱ部――わが国の防衛施策の問題点
・第1章:憲法と集団的自衛権
・第2章:核武装でもMD(ミサイル防衛)でもなく
・第3章:エネルギー安全保障環境の激変にいかに対処するか
・第4章:空の安全をいかにして守るか
・第5章:中国の間接侵略にいかに対処するか

兵頭二十八師の新刊『兵頭二十八の防衛白書2014』(草思社刊)を読みました。横組みのペーパーバック風で、いかにも“最新情報をいち早くまとめました”的なスタイルの新刊は、軍師が後記で書いている通り「『日本人が知らない軍事学の常識』の最新版」です。以下、後記をそのまま引用します。

「『兵頭二十八の防衛白書2014』は、年刊としてシリーズ化され、これから毎年7月に(あっ、防衛省さんの『』日本の防衛――防衛白書』と偶然同じタイミングですね)最新版をリリースして参る予定です。草思社さんの英断に拍手!」
「思えば1995年刊の『日本の防衛力再考』(銀河出版)いらい、わたしは書籍や雑誌やブログや講演等を通じ、自衛隊や政府の安全保障セクションにいろいろな注文をつけてきたものです。そして昨2013年時点におけるその到達点は、この兵頭版防衛白書の「ゼロ号」だとも呼べる「『日本人が知らない軍事学の常識』にまとめておきました。「第1号」である2014年版の本書と併せ、ぜひそちらもお読みになってください。これまで国防の話になどご興味の無かった皆さんが、いきなり深い理解に到達してしまえるのです」(227頁)

目次にある通り、書かれていること自体は『日本人が知らない軍事学の常識』がベースですが、その内容はといえば、最新兵器事情や日々刻々と変わりつつある東アジア情勢への対応策がメイン。いってみれば「いまはなきMIL短blogで書かれていた情報を精製し、面白いところだけを抽出して、軍師独自の論説も大々的に上乗せしたモノ」といっていいでしょう。なので、内容面で既刊と丸被りしているところは存外少ないです。

20年前に比べて激変し、かつ日々変わりつつある東アジア情勢を巡っては、昨今大人気の“嫌韓本”を筆頭に、数多くの書籍や論説が出ています。著者は学者や元官僚、政治家を始めとするプロ中のプロです。が、これらの書籍、論説の90%以上はクズといっていいでしょう。

えっ? ド素人のお前が偉そうに何を言うんだって!?

いえね、ド素人でもですね、「アメリカのプロパー」や「中共の宣伝員」くらいの見分けはつきますからね。

えっ? どうやって見分けているのかって!?

そりゃまぁいろいろとコツはあるんですが、2014年7月現在時点において一番簡単な見分け方は――

●オスプレイ導入を超積極的に主張する人=アメリカのプロパー
●米中合作(=G2論。太平洋を米中で分け合い、支配する云々)を主張する人=中共の宣伝員

――ってとこですかね。

もちろん上記の論を、心底本気で主張しているプロパーでも宣伝員でもない人も少なからず存在します。が、そういう人は多分、アタマの造りが粗雑な手前よりも残念な人なんでしょう(上記の論がいかに誤っているかについては、新刊に余すところなく書かれています)。

で、これらのプロパーや工作員の言葉なんてものは、所詮、ポジショントークでしかないんですね。加えて、例えそこに一片の真実があったとしても、専門家でもなんでもない手前みたいな一般人にしてもれば、プロパガンダの洪水から、一々真実を選り分ける手間なんてかけてられないわけです。

その点、軍師はアメリカのプロパーでもなければ、中共の宣伝員でもないことはハッキリしていますからね。実際、日本国憲法廃棄論を主張(=サンフランシスコ講和条約への公然たる挑戦)している時点で、アメリカをハッキリ敵に回しつつ、中共のことを儒教国家(新刊では「朱子学は、宗教ではなく、専制的当地集団に都合のよい反道徳体系である」(113頁)と定義)として、その反近代性を徹底的に指弾しているんですから。これはもう、どう見たってプロパーや宣伝員、工作員じゃないことだけは間違いないってことです。

なので、東アジア情勢について基本的なことのみならず、より深い事情を知りたいのであれば、まずは軍師の論を読むのが一番! と、声を大にして主張したい。

……なんてことを書いているのには理由があってですね、実は昨今の日朝接近をタネに軍師絡みのエントリを書こうと思っていたんですが、新刊を読んで断念。改めて軍師の凄みを実感したからですよ。

というのも手前は、日朝接近について漠然と、「もはや韓国が敵であることは、国民の大多数が承知しているのだから、対抗上、韓国の主敵と気脈を通じるためにやっていることかなァ」「あ、あと、本当に崩壊したら米中にとってもやっかいだから、延命措置のため金を払うことをアメリカから要請されたのかなァ」くらいに考えていたんですよ。で、「そういえば軍師が7年前に北朝鮮に学べ(=韓国は敵であり、歴史的に友好関係を結べる相手ではない)ってテーマで本だしてたじゃん!」ということを思い出し、この辺のハナシについてのエントリを書こうとぼんやり考えていたのですが……。

軍師に言わせると、「北朝鮮は国としてもう終わりました」(3頁)ってことですからね。実際、その理由も一々説得力のあるハナシ――該当部分の中見出しは、・「核武装」の疑問、・核物質生産力の疑問、・粛清文化の疑問、・中共の態度の疑問、・口先挑発の疑問、・統一願望の疑問、・闇ビジネスの疑問、・半島からのエクソダスの疑問、・無人機の疑問――で、つまるところ軍師が7年前に披露した説をベースに四の五の書いたところで、最新事情を縷々述べた新刊が出た以上、↑のようなエントリなんて、アウトプットした瞬間に賞味期限切れなわけですよ。

というわけで、「なぜいま、日朝接近が行なわれているのか?」とか「北朝鮮、てか金正恩体制はどうやって崩壊するか?」みたいなハナシを知りたい人は、新刊を買うか、新刊に併せて上梓される論文(『Voice』9月号)を立ち読みするかしてください。

ともあれ手前は、韓国は仏像を返還すべきであると思う。