2011年7月17日日曜日

落×駒:<軸足回転打法>は嘘っぱちだ!

*以下、特に断りがない場合は、駒田徳広の言葉は『問いただす“間違いだらけ”の打撃指導』(ベースボール・マガジン社)』、落合博満の言葉は『落合博満の超野球学・バッティングの理屈①』(ベースボール・マガジン社)からの引用です。なお、上記書籍からの引用部分の末尾には(駒・●頁)、(落・●頁)と表記します。

落合と駒田の打撃論は、よくよく読むと共通点が数多くあります。その最たる例が「軸足回転」に対するスタンスです。落合は、『落合博満の超野球学・バッティングの理屈②』で、<軸足回転打法>について、次のように書いています。

「読者の皆さんも試していただきたい。両足を接地したまま、どちらかの足を軸にして体を回転させることができるだろうか」
(中略)
「百歩譲って、バッティングでも軸足回転ができたとしよう。だが、軸足で回転することはできても、その中で体重を移動させていくことは不可能だ。これで結論は出たと思う。バッティングにおける回転運動は、体の中心線を軸にしなければできないのだ」(41頁)

駒田も以下のように書いています。

現在、バッティング理論の基礎でもあるかのように繰り返し言われるのが「軸足で回転して打て」の一言です。
(中略)
そもそもコマのように回転するだけだと、バットをボールに当てる確率はかなり低いものになってしまわないでしょうか。
(中略)
ステップとともに体重が前に移動していく以上、体の軸が移動するのも当然です。
つまり、運動軸とは一連の体重移動のなかでバットに最大限のパワーを加えられる状態の体の軸のことであり、バッティングフォームでは体は前に出ていく動きは非常に重要なものになっていきます。
「軸足でしっかり回転して打て」というと、いかにも下半身を使った打ち方のように聞こえますが、実は逆です。ステップする方向への直線運動があるから、下半身を使ったバッティングをすることができるのです。
(駒・29~30頁)

このように、いわゆる<軸足回転打法>はウソ! とハッキリと否定しています。その論旨も全く同じです。すなわち、体重移動しなければスイングできない以上、軸足だけで振ることに意味はない(=落合曰く「フィギュアスケートのスピン」、駒田曰く「コマのような回転」でスイングすることに意味はない)ので、この点については“正しい”といえると思います。

「軸足に意識を置け」という指導自体は、古くからあるポピュラーなものでした。その目的は、スイングの際にボールを迎えにいくことを修正するためです……と、素人が言っても説得力がないので、再び落合の『落合博満の超野球学・バッティングの理屈②』より引用します。

「私は、この“軸足回転”のスイングを完全否定はしない。ただし、体が投手寄りに倒れてしまう選手が、その悪癖を矯正するための手段とする場合に限ってだ。もちろん、前頁で書いたように、実際に軸足で回転するスイングをすることは物理的に不可能なのだから、あくまでも意識の置き方というレベルが条件である」(45頁)

この指導法がここまで広まったのは、渡米前の松井秀喜選手が、日米野球で来日したサミー・ソーサにバッティング指南を受けた際、「軸足で回転しろ」的なアドバイスを受けたことが一つの契機といえるのでしょう。ともあれ、前述のような矯正以外の目的で「<軸足回転打法>はサイコー!」と書いている打撃書は、あんまり信用できそうにないということは言えるのかも知れません。
(つづく)

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