ここまで10日以上に渡って書いてきた「落合博満×駒田徳広」のエントリ。タイトルこそ挑戦的なものの、最終的には穏当な結論に落ち着いてしまって肩透かし感がハンパない感じです。が、落合も駒田も認めているように、「バッティングに正解はない」ので、どっちかに軍配が上がるようなハナシでもないんでしょう。
ともあれ、手前の感想をザックリとまとめると、「落合の理論は理想論であり原則論」「駒田の理論は現実論であり応用論」ってとこでしょうか。大きな視点でバッティングを考究できる理論書という観点から見れば、やっぱり『落合博満の超野球学・バッティングの理屈①』(ベースボール・マガジン社)に勝るものは未だにないと感じています。
だからといって駒田の『問いただす“間違いだらけ”の打撃指導』(ベースボール・マガジン社)』が、落合の著書に劣るといいたいわけではありません。すでに書いたとおり、左打者にとっては落合の著書よりも使い勝手が良いものですし、ある意味、バイブルになり得る内容なわけですから。
もう一つ駒田の著書の功績を挙げるとすれば、今日でも“常識”として奉る人が少なくない<ダウンスイング至上論>や<軸足回転打法>に対して明確なNOを突きつけたことと、昨今持てはやされている「引きつけて打て」という指導法(その顕著な成功例が金森栄治の指導)に疑義を差し挟んだことでしょう。
手前は<金森打法>は非常に優れたものだと思っています。それでも駒田の著書を読み、落合の著書と読み比べてからは、「非力な左打者に対しては、<金森打法>を画一的に押し付けるよりは、駒田の考えを応用した方が良い結果が出るのではないか?」と考えを改めました。当たり前のことですが、落合の言うことにも、金森の言うことにも、駒田のいうことにも絶対はないわけです。「バッティングに正解はない」ということを改めて確認できたことは大きな収穫でした。
ともあれ駒田の著書は、プロ野球ファンで打撃論に興味のある人であれば、まず目を通すべき本と思います。少なくとも古田敦也の『フルタの方程式――バッターズ・バイブル』(朝日新聞出版)よりも深く読ませ、いろいろと考えさせ、かつ楽しく読めることは間違いないということは保証します(なお、『フルタの方程式――バッターズ・バイブル』も凡百の打撃指導書よりは遥かに面白くためになる本です。内容は現代野球理論の最もオーソドックスなところをミックスしたようなもので、日ごろ野球本を読まない人にとっては得るところの多い本です)。
落合博満の超野球学〈1〉バッティングの理屈(注:Amazonリンク)
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