*以下、特に断りがない場合は、駒田徳広の言葉は『問いただす“間違いだらけ”の打撃指導』(ベースボール・マガジン社)』、落合博満の言葉は『落合博満の超野球学・バッティングの理屈①』(ベースボール・マガジン社)からの引用です。なお、上記書籍からの引用部分の末尾には(駒・●頁)、(落・●頁)と表記します。
・落合曰く、「スイングに合わせて前方にスウェーするのは良くない」
・駒田曰く、「足を上げて積極的に前へ体重移動すべし」
こうしてまとめてみると、「スイング時に体が前に動くこと(=いわゆる「球を迎えにいく」こと)」ことに対するスタンスが180度違うことがわかります。では、スウェーと体重移動は同じものなのか? といえば、「本質的に同じものじゃないの?」と思います。
落合も駒田も、スイングの際に上半身と下半身が連動しないこと――上半身だけが投手寄り、あるいは捕手寄りによれてしまうこと。下半身を使わずに上半身だけで打ちにいくとこのようになることが多い――にはダメ出ししています。いわゆる「回転軸の中心線」をぶれさせてはいけないということです。
そのうえで落合、駒田とも前述のような主張をしているので、「スウェーは上半身が突っ込むこと」といった意味でないことは明らかです。言葉を換えれば、両人のいう「スウェー」と「体重移動」に本質的な違いはない。つまり、同じことを言っていると考えられます。
では、どっちが正しいのでしょうか?
結論からいえばどっちもアリなんでしょう。ただ、この結論を得るためには違う視点から見ていく必要があります。
すなわち、「ホームランを捨てた左打者であれば、敢えてスウェーするのが極めて有効な場合もある。ただし、右打者であればどんなタイプであっても百害あって一利なし」ということ。つまり、バッターのタイプや特性、目指すところ……etcによって結論が変わってくるということです。
ちょっと結論を急ぎすぎましたが、その理由について書いてみたいと思います。
まず、スウェーすることのメリットはどこにあるのか? 駒田の言葉を引用します。
これは個人差がありますが、軸足で立った状態でボールを打ってみてください。意外と打つことは難しいのです。それよりは前足で立った状態のほうがボールは打てます。後ろ足より前足重心のほうがボールをとらえやすいということでしょう。
(駒・64頁)
百人一首のように止まっているカルタを目指して、片手でバーンと取りにいくような感覚でバッティングを考えては進歩がありません。
それではどうすればいいのか。ボールが約39センチ(都築注~140km/hのボールが0.01秒で動く距離)動くのなら、50センチくらいの幅でボールをとらえる打ち方を練習すればいいのです。それが前述した前足を上げてボールを待つバッティングだと思います。
(駒・82頁)
このように、「バットが振りやすいこと」(=バットコントロールが容易なこと)と、「ボールを点ではなく線(面)で捉えることで、バットをボールに当てる確率を最大化すること」を挙げています。
一方、スウェーすることのデメリットは、落合の言うとおり、「前方へのスウェーでは体と一緒に腕も出てきてしまうため、100パーセントの力でボールを叩くことができない、すなわちパワーのロスが起きるわけである」(落・57頁)となります。駒田は“運動軸”が前にある選手であれば、最も効率よくパワーを伝達できると説きますが、パワーヒッターで球を迎えにいく打ち方をして成功している選手がいないことも事実です。
加えて、スイングの際に体が前方にスウェーすると、右打者であればフォロースルー時に体が三塁方向に流れてしまいます。これでは一塁へ走り出すために余計な時間がかかり、良い当たりを打っても次の塁を陥れるのは難しいでしょう。当然、内野安打なども望めません。
しかし、左打者でホームランを最初から狙っていなければ、上記のようなデメリットは全てメリットに転じます。
・前足で重心を取ることでバットコントロールをしやすくなり
・前方にスウェーすることでボールを点ではなく線(面)で広く捉えやすくなり
・フォロースルー時に体が一塁方向に流れることでいち早く一塁にダッシュできる
ということ。つまり、左打者がイチロー選手のようなバッターを目指すのであれば、駒田の理論は正しいといえるわけです。
(つづく)
落合博満の超野球学〈1〉バッティングの理屈(注:Amazonリンク)
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