2014年8月20日水曜日

『ゴシップガール』のチラ裏:手前の考える「あるべきS6」

このあいだ、ツタヤの新作半額クーポンを使って『ゴシップガール』のシーズン6を吹き替えで視聴しました。2月に書いたとおり、S6は違法動画サイトで「字幕なし」のモノを見ていたわけですが……。さすがに英字幕もない動画では話半分どころか、1/3くらいしかわからなかったわけで、「この場面では、具体的にどんなセリフを言っているんだ」とか「ここで表情を変えたのは、こういう局面に至ったからなんだろうけど、セリフを良く聞き取れない以上、ハッキリしたことはわからないものなぁ」という感じで見ていたわけです。

で、吹き替えで見直してみたら、ハナシの流れが面白いようにわかるわかる! 実際、ダンがセリーナと“理想のデート”をした場面は、実はダンの××で……みたいな真相については、字幕なし原語版を見ていたときには把握できていなかったですからね。

こんな感じで――字幕なし原語版をつっかえつっか見ていたときに比べて相対的に――流れるようにハナシが進む吹き替え版を見れば、「一見荒唐無稽に見えるS6だって、実は極めてロジカルでかつ緻密な脚本で支えられているのだ!」と思ったり……はしなかったです。やっぱりねぇ、無理ありすぎ。

なもんだから、心の中でツッコミを入れまくりながら最終話まで見てしまったら、「オレがジョシュ・シュワルツなら、絶対にこうするのに!」という妄想が大爆発。以下、爆発の残滓をつらつらと綴っていくことにします(実の所、チラ裏以下の代物なので、よっぽどヒマな人以外は読まないで結構です)。

●あるべきS5終了時の状況

・S:全てを失いマンハッタンを後にする。
・B:新社長に就任。Dを振りCを選ぶ。
・C:社長を解任され無一文になる。
・N:誰にも頼らず出版社の社長として生きていく。
・D:Bに振られ、Sにコケにされ激昂。UESへの復讐を決心。
・G:UESへの復讐を目指すDに誘われ共闘する。
・R:Lとの諍いが発展し離婚する。
・L:Rと離婚後、がんが再発する。

――「実はバートが生きてしました」をなかったことにして、リリーの病気が深刻な形で再発させたこと以外は、ほとんど同じ。で、この前提から、手前の考える「あるべきS6」がスタート。

●あるべきS6の骨組み

<起>

・DはUESの面々を破滅させるため、暴露本による攻撃を試みる。少しずつ効果的に攻めていくため、ヴァニティ・フェアに各章ごと掲載する段取りをつける。

・Sはポキプシーに辿り着く。UESを出る直前に預金を下ろし、これで新しい名前とIDを手に入れ、別人(=サブリナ)となっていた。Sは地元の病院で受付事務をしながら看護学校に通う日々。UESの面々から見捨てられ、恋人も父親も失ったSは、これまでの生き方を痛切に反省。市井で生きる事を考え始める。

・Cは、Bの離婚のために会社の金を流用したことを経営陣に咎められ、取締役会で社長を解任された。反撃を目指すCは、Nの媒体を使ってバス産業のネガティブキャンペーンを張る。しかし、本格的に復権を目指すためには大きな資本が必要と悟る。

・Bは会社の経営に戸惑っていた。学生時代のようなやり方では会社は回らない。しかも、新社長披露の記事を取材するのは、学生時代にいじめていたネリー。良くも悪くも正直に書かれた結果、Bの信用は失墜。会社の業績は徐々に悪化する。

・Nは出版社の独立性を保つため、祖父からの資本提供を拒絶。結果、経営面で窮地にたつ。Cの依頼によりバス産業のスキャンダルを暴き、一時的に業績が回復した結果、紙面はより通俗的なものとなり、お堅い広告主からの信用を失いつつある。

<承>

・Dは紙爆弾を投下。あわせてG、ネリーと組み、UES3人組の信用失墜を狙った情報工作を行う。具体的には、ネリーが情報収集し、Dが策略を考え、Gが実行するという形。Dは容赦せずに手を打ち、UES3人組を窮地に陥れる。しかし、彼らとRを完全に敵に回してしまった結果、ブルックリンにもUESにも戻れず、女を引っ掛けその日の宿を確保するジゴロ生活を送ることに。

・UES3人組は、自らの状況悪化の多くがDの策略あると看破。UES連合として共闘する。第一歩としてDの人格攻撃と自らの抗弁を狙って大手マスコミのインタビューに答えた。しかし、ネリーが事前に察知。これを受けてDは、先手を打って自らの失態を明らかにした記事を投下。加えて三人の資産状況が悪化していることを暴露する。これによりUES連合はますます窮地に陥る。

・その頃、Sは市井の生活に安住していた。初めての労働と対価。お金のありがたみと、市井の生活のあり方をしみじみ感じる日々。いつしか市井の生活に慣れ、“自分探し”に成功しつつあった。

・一方Dも、Sに対してだけは紙爆弾を投下しなかった。理由はUESにおらず攻撃する必要がなかったため。そんな折、Lが病状の悪化により入院。Lは相続問題を整理すべく、本格的にSを捜しはじめる。しかし、別人となったSをなかなか見つけられない。

・Nは出版社の経営悪化に歯止めを掛けるべく、Dに連載を依頼する。現在、アメリカで最も注目を浴びている連載を、ヴァニティ・フェアから引き抜くことで、多くの読者を確保して広告収入をアップすることが狙い。仇であるDの手腕を認め、恥を忍んで頼み込む。これをDは快諾した。DはNを膝下においたことで、Nに対して自分が“よそ者”ではなく“対等の男”であることを認めさせたのだった。

・NがDの軍門に下ったことにより、CとBはより密接な関係で共闘する。しかし、Nの媒体は使えず、資本のないCは有効な手が打てず、Bの策略もDとGの“本気の共闘”の前に空振りするのだった。逆転の目を出すには、バス産業の大株主であるLの協力が欠かせない。しかし、入院中のLの病状は極めて深刻で、Cへの支援ができないでいた。

・Lの持つ切り札を使うためには、LからSへの相続問題を解決する必要があった。入院中のLからSへ一部資産を生前贈与するとともに、遺言書を公開することで、Sが新たにローズ家の当主となることを内外に公示する。その後Sが、Cへバス産業の株を移譲するという形で支援する。このスキームが成立することで、Cはバス産業への復帰が叶うはずだった。こうしてCが復活すれば、Bに対して物心両面でのサポートができる。そうなればCとBは一気にDへ反撃できる目算が立つのであった。最後の望みがSにあると見たCとBは、人知を尽くしてSを捜索する。

<転>

CとBは、ポキプシーの病院で働いているSを見つける。UES復帰を求めるCとBに対して、Sはにべもなく拒絶する。SはUESに戻る気はさらさらなく、相続放棄して弟に全て譲る考えだった。もし、弟に相続されてしまえば、Cが支援を受ける可能性はゼロ。というのも、弟は財産を全て同性愛擁護団体に寄付する決心をしていたから。弟は、自分が音頭をとってJを追い出したものの、そのことについて猛烈に後悔しており、「Jの人格を変えたUES」のことを嫌悪しているのだった。

・BはSを説得する。「私達は家族同然の中でしょ? 家族を助けると思ってUESに戻ってきて」 この泣き落としに折れ、SはUESに復帰する。

・UESの生活にすぐ馴染むS。確かに市井の生活には、生の実感が感じられた。労働の価値も身に染みた。しかし、自分の本質はローズ家の後継者であり、世界屈指の富豪であり、誰もが注目するセレブなのである――ということを改めて実感する。

・Sは、市井の生活では、毎日の仕事と看護師になるための勉強に必死で、男のことを一切考えずにいられた。しかし、UESの生活に慣れ、時間に余裕が出てくると、男のことを考えずにいられなくなる。ただし、男といっても思い浮かぶのはDのことだけ。ただし、Dに対しては愛憎半ばした複雑な気持ちを抱いていた。

・一方Dは、ジゴロ生活にむなしさを感じていた。恋人と父とUESの友人を失い、心を許せる人は誰一人いない。共闘するGとネリーは、利害関係が一致しているだけで友人ではない。加えて一緒に寝る女たちは、Dの金と名声が目当てであり、打ち解けた関係に発展するはずもなかった。こうして復讐に身をやつし、砂を噛むような日々を送るなか、Dは、これまでの人生で最も情熱的に生きたのはBとの生活だったが、最も幸せだったのはSとの生活であったと気づく。

・RとLが別れた以上、二人を分かつ障害はない。加えてSが市井の生活を知ったことで、別れの真因であった価値観の違いも克服されつつあった。SはUES流の生き方がノーマルではないことを、初めて知ったのであった。

・当初はわだかまりのあった二人だったが、Dが“戦略的アプローチ”をかけたことで、二人は急接近する。Dの“戦略的アプローチ”は、UESに復帰したSに対する紙爆弾のための仕込み。「心に隙間のあるSは、ちょっとしたアプローチで股を開く軽薄な女」という真実を書くためにやったことだった。

・Dの復讐は、UESの面々から“よそ者”と蔑まれず、憎まれても“対等の男”であると思い知らせることで完遂する。既にNは軍門に下り、CとBは陥落寸前。残るはSだった。Sを落とせば復讐を遂げられる。すでに仕込みは大成功し、あとは記事を載せるだけだった。しかし、罠に掛けたつもりが本気になってしまい、DはSに改めて恋をする。

・SはUESに復帰し、Dとの関係を復活させるなかで相続問題を整理。ローズ家の新当主となった。これによりバス産業の株式も引継ぎ、Cに対する支援ができるようになった。Cを支援することで、CはBを助け、これによりCとBは窮地を脱することができる。

・しかし、こうなってしまってはDの復讐は失敗してしまう。復讐を完遂するためには、二つの方法が考えられる。一つは、Sに対して紙爆弾を投下して、Sの信用を失墜させつつ、G、ネリーとの共闘によりCとBへ最後の策略をしかけること。いま一つは、Sと一緒に市井の人に戻り、UESを脱出すること。Dはより穏健な方法にして、二人の関係を永続化させる手を打つことにする。すなわち「財産もUESも捨てて、二人でローマに行く」という一手。

・DがSをローマに連れて行き、一緒に暮らすことができれば、Dは「Nを膝下におき」「CとBを無位無官にさせ」「SをUESの住人から市井の人に落とす」という形で、UESの住人と対等の関係になることができ、復讐を完遂できる。しかし、Sがローマ行きに賛同しなければ、SはCとBを支援し、二人は復活してしまう。

・Sはローマ行きを逡巡する。Dとの愛を取るか、Bとの友情を取るか。UESのノーマルではない生活を取るか、市井の実のある生活を取るか。これこそがSが大人になるために受ける最後の洗礼であり、選択なのであった。

<結>

・Lの後継者として様々なパーティの主役を張るS。UESの女王としての階梯を上っていくうちに、UESの魅力に改めて取り憑かれるS。一方Dは、改めてSをローマに誘う。

・Sは悩みに悩んだ結果、ローマ行きを断わる。失意にまみれたD。その手には紙爆弾の記事とラブレターの記事があった。紙爆弾を出せば、息を吹き返したSを貶め、CとBに止めをさせる。しかし、Sとの関係は完全に断絶する。Sを愛していたが、UESの女王となったSと交際を続けても、遠からず価値観の違いにより別れることは必定。結局Dは、復讐を諦めSとの愛を選んだ。連載は中止。ラブレター記事をSのポストに入れ、静かにローマへと旅立っていった。

・Sはラブレター記事を読み、自分がかけがえのないものを失ったことに気づく。全てを捨ててDを追い、空港まで行くが、すでにDは旅立っていった。Sは自分の失ったものの大きさを思い知る。二度と手に入らない愛。Sは自分の青春時代が終わったことを悟った。UESで最も権威のある委員会の新委員長に推戴されるS。Sは愛を代償にして、祖母、母と同じように、新たなUESの女王となったのであった。そしてバス産業の株式をCに譲渡し、CとBを救った。

●あるべきS6のエピローグ

20年後――

・Nはメディア王として名を馳せた後、NY市長となった。現在は二期目を目指すか、上院議員を目指すか、その去就に注目が集まっていた。

・Cはエンパイアホテル拠点に世界的ホテルチェーンを創設。新たな帝国を構築していた。Bは妻として支えつつ、アパレル会社を経営。2人の間には1人息子のヘンリーがいた。

・Dは、Sとの関係をベースとした本格恋愛小説を上梓。この本が評価された結果、暴露本作家からベストセラー小説家へとランクアップ。ローマに住み続け、女をとっかえひっかえしながら旺盛な作家活動を行っていた。

・SはUESの女王として君臨。3度の結婚を経て独身となっていた。そんな折、Sの住むアパートメントの委員会に入会希望者が訪れる。他の委員は入会に反対。曰く「マドンナも入会させなかったのに、新参の成金などを入れるのは論外」 しかし、名簿を見たSは他の委員を制して「まずは話を訊いてみましょう」と促す。入室してきたのはD。視線を交わし微笑みあう二人。

――完

というわけでGG関連のエントリはこれで完全に打ち止め。しっかし、今年始めに見始めたときは、ここまでズブズブにハマるとは思ってもみなかった。気づいたら『マッドメン』よりも多くのエントリを書いてるんだものなぁ。ドラマとしての完成度と面白さってのは全く別物ってことなのかもね。

ともあれ手前は、韓国は仏像を返還すべきであると思う。