2015年12月11日金曜日

ザ・フラッシュは良かったけど、Arrowは……

・ザ・フラッシュ(S1):◎。ファーストインプレッションは、「これは間違いなく今年一番のドラマ。てか、SFドラマとしても史上屈指じゃねぇか!」。まぁ、視聴後しばらくたったいまでは、ここまで大絶賛することはありませんが、それでも今年観た海外ドラマのなかでは、『ナルコス』に匹敵する面白さであったと断言します。

「面白いといったって、所詮、スーパーヒーロードラマでしょ?」
「シーズン3がアレな出来だった『Arrow』のスピンオフだしねぇ……」

正直、観る前はこんな感じでナメていたわけですよ。でも、そのテイストは「『アメイジング・スパイダーマン』と『フリンジ』と『Dr.Who』を足して3じゃなくて2で割った」というもので、つまるところ手前の好きなものをてんこ盛りにしたドラマってことです。

あえて3ではなく2で割ったことには理由があります。それは「ストーリー展開が早く、シーズン全体の密度が高い」こと。実際、『Smallville』なら3シーズンくらいかけてやるようなことを、1シーズンで語り終えているわけです。それくらいトントンと話しが進むうえに、意外&容赦ない展開もあったりして、思いのほか先の読めず、「じゃぁ、次はどーなるんよ!?」と、次から次へとDVDを入れ替えてしまうと。

で、こういったストーリー展開の早いお話しであれば、多くの場合、人間関係やキャラの掘り下げが浅くなるものです。つまり、テンプレート通りの薄っぺらいキャラが、チェスの駒のように動くだけで、大筋では面白いけど、中身はゼロで心に何一つ残らないドラマになるってことです。この点、『フラッシュ』は、無駄な回顧や色恋沙汰を一切なくし、各キャラ、展開に必要不可欠なエピソードを厳選して深く掘り下げる手法をとっています。なので中身はスカスカどころか非常にタイトでみっしり詰まっているわけです。

唯一不満を言うなら、大切な人への「身バレ」がアッサリ過ぎたこと。手前の考えでは、スーパーヒーローもののお話しにおいては、「身バレ」こそが“華”なので――この点、『Smallville』は本当に素晴らしかった。シーズン5でラナにアレするシーンは、スーパーマン史上最高にロマンチックな「身バレ」です――、これが何のカタルシスも感じられないようなシーンになっていたのは、本当に残念だった。これこそが製作者の意図であるとわかってはいても、ねぇ……。

あと、ヒロイン。随分と評判が悪いようだけど、手前は好きです。実際、「幼馴染で告白したいけど、なかなかできない相手」のルックスとしては、パーフェクトに近いと思いますね。これが目を引くような美人であれば、「何で主人公はさっさと告白してチョメチョメしないだ!」ってなるし、ブサイクならどうでもいい存在に成り下がるでしょう。でも、美人すぎず愛嬌があるからね。

・Arrow(S3):△。つじつまはあっている。というか、良く合わせたものだと思う。サイドキックはアーセナルからスピーディになるし、ダイナもブラックキャナリーになる。あまつさえちゃんと超音波攻撃までする。ノーラン版バットマンシリーズライクなリアルっぽい路線で、ここまで原作要素を盛り込んだことは、素直に凄いと思う。シーズン通してのハナシや色恋沙汰にも、一応、決着はついた。決着の付き方も、十分納得できるもので、これ自体に不満はない。

でも、設定からハナシから色恋から人間関係まで、つじつまを合わせるためのロジックがあまりにもガバガバ。もはや突っ込むのが野暮になるんじゃないかというくらい、突っ込みどころが満載で、なんというか、敢えて突っ込まれるスタイルをとっているとしか思えないくらいにヒドイ。

なので、後半は完全にあきれながら見ていたけど、不思議なことに嫌いにはなれなかった。S4のレンタルが解禁されれば、たぶん、一足早く観る事になるだろうね。

追記:『007 スペクター』の件。感想は「う~ん、なんともなぁ……」。期待値が尋常でないくらいに高かったので、観終わった後の失望感はとても大きかった。どれくらい残念だったのかといえば、「ドルジ引退の方を耳にした時の5倍くらい」のガッカリ感。純粋に一本のサスペンスアクションとして観た場合、出来はそこまで悪くない……ってこともないだろうね。実際、『M.I.5』や『ウィンター・ソルジャー』のが全然面白かったしなぁ。

シリーズの完全リブートとなった『カジノ・ロワイヤル』は、劇場に2回行ったくらい大好きだし、リブートから新シリーズへのフックとなった『スカイフォール』にも心底満足していた――というくらい、ダニエル・クレイグの007は大好きなのよ。で、45年ぶりに宿敵スペクターが復活して、ブロフェルドを演じるのがクリストフ・ヴァルツで、サム・メンデスが監督続投なんて聞いた日には、観る前の期待値が東京スカイツリー以上の高さになることは必定なワケで。正直、『マッド・マックス』や『スターウォーズ』の10倍楽しみにしてましたからね。

色々言いたいことはあるけど、書いていくと怒りのあまりあることないことをえんえんと書き連ねそうなので、ここは涙を飲んで割愛。ただ一つだけ言うなら、「泥臭くて強面なダニエル・クレイグと、007シリーズのお約束展開って、絶望的に食合せが悪かったのだなぁ」ということ。前作までの「旧シリーズよりも格段にリアリティラインが上がった作品」では、ピッタリとハマっていたんだけどなぁ。

ともあれ手前は、韓国は仏像を返還すべきであると思う。