2011年7月30日土曜日

一応指摘しておきます:その2(伊良部の評価)

故伊良部秀輝について、「日本一早かった」「メジャーでも成功した」「凄いピッチャーだった」「最後の速球派だった」……etcと、そこらじゅうで美化されまくっています。確かに一流のピッチャーでした。でも、高校時代からリアルタイムで見てきた手前としては、野茂英雄や松坂大輔には及ばず、インパクトという面でも今中慎二や伊藤智仁あたりに及ばなかったという印象があります。亡くなったから思い出を美化しよう――という気持ちは良くわかるんですが、そうした美化したハナシが“定説”になってしまうのも困ったことだと思うので、ここでは敢えて「意識的に美化しない手前の感想」を書くことにします。

・高校時代――同期では圧倒的に川島堅が上。良く見てもPLのWエースだった橋本清、野村弘樹と同格と見ていた。当時はスポーツ紙の評価に影響されまくっていたので、多分、世評もこんなものだったのでは? 少なくとも「高校ナンバーワン投手」とか「超高校級」という評価ではなかった。あと、スピードボールにしても前世代の渡辺智男の方が凄かった。

・ロッテ時代――スピードガンは凄かったけど、ストレートの威力が日本一とまでは思わなかった。今でいうマーク・クルーン投手のストレートのような扱いだったのでは? これは完全に手前の主観だけど、正直、球威という点で見れば10km/h遅かった全盛期の江川卓のが凄いと常々思っていた(なお、ダルビッシュ有投手のストレートの感想は「江川より1段上」というものです)。

あと、名シーンとしてTV番組やYouTubeで盛んに取り上げられている「158km/h」の印象が強くて、世間的には“速球派”という扱いになっているけど、彼の投球スタイルはロッテ時代から“軟投派”だったことも指摘しておきたい。ここでいう“速球派”とは、江川や川口和久、今中のように、「勝負球のほとんどがストレート(投球の8割近く)で、タイミングを外すときにカーブを投げる」ような投球スタイルのことです。伊良部は誰よりも速い球を投げられたものの、その投球スタイルはオリエントエクスプレスと称された郭泰源と同じように、変化球を織り交ぜた“軟投派”でした。

・メジャー時代――好不調の波が激しすぎたので何ともいい難いけど、好調のときはメジャーでも屈指のピッチャーだったことは確か。年間通して好調であれば軽く20勝できたとも思う。ただ、好調が長続きしないので、延べてみれば石井一久や吉井理人にも及ばなかったという印象。

というわけで、手前の見た伊良部は、「クルーンみたいなストレートを持った頭脳派投手」という感じです。

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