1941年から今日まで一度も生まれていない「四割打者」。彼らが生息できたのは、プレーのレベルが低く、システムもこなれておらず、個々の才能の差がダイレクトに反映されていた野球黎明期に限られていた――というのがグルードの結論だった。
「いや、実はタイ・カッブやテッド・ウィリアムズが偉大すぎただけだ!」
という主張も100%否定できるわけではない。もしかしたらアルバート・プホルスを凌ぐ才能があったのかも知れない。が、説得力という点においてはグルードの説に大きく見劣りすると言わざるを得ない。多分、マラソンや短距離走などと同じように、野球の競技レベルは大きく向上しているのだろう。
で、手前的には、ここからが本題です。
グルードが提示した様々なデータに見られる共通点は、「1940年代を境に、数字の伸びが横ばい状態になる」というところだ。つまり、メジャーリーグの発祥から60余年で競技自体の成熟化が始まっていることが考えられる。
ではこの話を、日本プロ野球にもほとんどそのまま適用してみるとどうなるだろうか? 言うまでもなく野球のルールは、メジャーリーグも日本プロ野球も一緒だ。「複雑なシステムは、最高の選手が同じルールで長期にわたってプレーすることで向上する」ということを考えると、この仮定もあながち突飛なものとはいえないだろう。
となると、日本プロ野球の発祥から60余年はいつになるのか? 日本職業野球連盟が結成され初のリーグ戦が行なわれた1936年を基点に考えると90年代後半となる。ここにおいて、日本野球の成熟化が始まったと想像できるのではないだろうか。
この想像を前提に考えると、(ひょうたんから駒な結果だったとはいえ)野茂英雄がメジャーリーグで大成功を収め、以来、数々の日本人選手がメジャーリーグでそれなりの成功を収めていることに対しても、より納得力のある説明ができる。
すなわち、「競技レベルが成熟化するまでに向上した日本野球が、既に成熟化して久しく、競技レベルの向上幅が横ばい状態にあるメジャーリーグに追いつきつつある」ということだ。もちろん各種統計を調べたわけではないので、想像の範疇を超える話ではない。でも、2012年に地球が滅亡するという話よりは筋がいいのではないだろうか。
と、考えていくと日本野球がメジャーリーグと肩を並べる日は、そう遠い未来ではないのかもしれない。ただし、その頃には日本野球も、歴史を重ねて成熟を深めた韓国野球や台湾野球に追いつかれていることだろう。
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