2010年3月11日木曜日

私家版・兵頭二十八の読み方:その2

本の読み方は一つじゃない。
1頁目から順繰り順繰り読むのが絶対に正しいわけでもない。

ということを初めて体得したのは二十歳そこそこの頃。大傑作SF『竜の卵』を読んだときのことだ。『竜の卵』を初めて手にとったのは高校生のときだったけど、当時は序盤(一章:パルサー)の科学解説のたるさに嫌気が差して、すぐに投げ出してしまった。その後、積読本を片付けるときに「捨てる前に面白そうなとこだけ読んでみよっ!」と、二章:火山から読み始めたら、あまりの面白さに積読本を片付けるのを忘れて読んじゃった――という経験から、「必ずしも1頁目から読むことが正しいってわけじゃない」ってことを身体で知ったわけです。

邪道だって? いいのいいの。「本は楽譜のようなもの」なんだから!

というわけで昨日の続き、「私家版・兵頭二十八の読み方」です。

結論からいうと、「デビュー作の『日本の防衛力再考』をじっくり読め。以上」ってことです。

*『日本の防衛力再考』は、武道通信のサイト「兵頭二十八を読む」のコーナーでPDFファイル(¥1500)を配信。

……いや、これ以上ない事実なんだけどね。この本自体は、自衛隊の改革と核武装をメインに訴えたものだけど、日本人の精神構造から旧軍兵器、武侠精神、国際情勢など、その後に刊行されるほとんどの本の要素が盛り込まれている(昨日、改めてナナメ読みしてみたら新刊のテーマである「エネルギー事情」にもしっかりと踏み込んでいましたよ)。ある意味、兵頭二十八ファンにとっては“アカシックレコード”のような本といえます。

ただ、こういってしまうとおしまいなので、もう少し噛み砕いてみましょう。

新刊を読んで手前が感じた「読者が著者の主張を知っていることを前提に、話をどんどん進めている」ってことは、より具体的にいうとどういうことなのか?

新刊では1章から5章にかけて、米軍の脱石油化の動きから中東情勢の今後、こうした国際情勢の動きに対応した中国の展望などが語られている。多くは国内外のニュース、書籍を元にした予測だけど、兵頭師の真価は「ニュース、書籍だけでは見えない可能性」にまで大胆に踏み込むことにある。誤解を恐れずに言うなら、「著者の推測を元に大胆な予測をする」ということ。

で、問題は「著者の推測の根拠となっているものは何か」ってこと。
これがわかっている人にとっては、「なるほど」となり、よくわかってない人にとっては「そこまで言うか!」となり、知らない人にとっては「なにいってるかわかんない」となる。

このことを野球に例えて説明してみよう。

<6回表で0-0。ノーアウト、ランナー一塁。打順は三番。右の強打者(プルヒッター)という局面で、解説者が「ここは右打ちですね」と断言した場合>

解説者の推測は――

・中盤で0-0だから先制点が欲しいはず
・そのためには一塁のランナーを得点圏(二塁)に進めたい
・しかし、「クリンアップの打者」「右の強打者」にバントは命じずらい
・プルヒッターだからいつもは引っ張る(左打ち)けど、この局面でゴロを打てばダブルプレーになる可能性が高い
・ということはベンチも打者も十分承知しているはず
・となれば、ベンチの指示もしくは打者の判断で右打ちをするはず

――というセオリーが根拠となっている。

このセオリーを承知している人にとっては「なるほど」となり、よくわかってない人にとっては「そこまで言うか!」となり、知らない人にとっては「なにいってるかわかんない」となる。

話が長くなったけど、つまり兵頭師が大胆に推測する根拠がわかれば、中身がぎっしり詰まった新刊であっても、たちどころにスイスイ読める可能性があるってことです。

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