2010年5月17日月曜日

川口和久、「反逆の左腕」

『反逆の左腕』(ネコ・パブリッシング)は、川口和久の2冊目の著書だ。このあいだ『投球論』について書き、アフェリエイトのことで川口の本を検索していて初めて知った。で、いつものようにblogに書こうと思い、手にとってみたものの……これ、トンデモ本じゃねぇか!

この本の内容を一言でいうなら、「左利きはsugeee、左利きはtueeee、だからオレのことをリスペクトしろ!」という内容の本です。前著『投球論』でも独りよがりな論があったけど、この本は独りよがりな論しかない!

例えばこの文章。

「日本の野球史上、一流と呼ばれた左ピッチャーは全員が全員、カーブの曲がりがすばらしいピッチャーばかりです。カーブというのは少し語弊があります。左ピッチャーのカーブというのは、右ピッチャーの投げるカーブとはまったく別のボールです」(44頁)

としたうえで、右ピッチャーのカーブが「横のカーブ」であるのに対し、左ピッチャーのカーブは「縦のカーブ」、すなわちドロップであるとする。金田正一、江夏豊、新浦寿夫、大野豊……いずれもドロップの使い手である一方、右ピッチャーでは、指に障害のあった堀内恒夫を例外として、佐々木主浩、松坂大輔投手、木田優夫投手らのカーブはほとんど武器になっていないと説くわけですよ。

だったら、“懸河のドロップ”と謳われた沢村栄治はどうなんだと。別所毅彦、権藤博だってドロップで鳴らした本格派でしょう? 手前が現役時代を知っている選手でも、江川卓、桑田真澄のカーブは教科書通りの「縦のカーブ」だし、これ以外にも右ピッチャーの「ドロップ使い=古典的な本格派」は数多くいたと思うんだけどねぇ。

この他にも――

「大部分のサウスポーが日本の東側ではなく西側に存在しているのです。ウエストポーと呼んでもいいぐらいの数の多さです」(24頁)

「ファーストにいても気にせず、スローカーブを投げることができるのです。~~中略~~それに加えてサウスポーには人をおちょくったようなボールを投げるのが好き、という習性があればこそなのです」(90頁)

――という具合。なもので、この本について、手前の乏しい知識と表現力では、冒頭で書いたことくらい書けません。というわけで今回は、興味深いところだけを「読書メモ」として紹介することにします。

・タブーとされていた水泳トレーニングを始めたのは、日本球界では広島カープが最初だった。

・「川口、じつはワシはサウスポーのことはわからんのじゃ。サウスポーは博打なんよ」 伝説のスカウト・木庭教の言葉。

・サウスポーに綺麗なフォームの持ち主が少ないのは、少年のことからサウスポーを教えられる指導者が少ないというのが一番の理由。

・ピンチの場面で巨人ベンチは、アウトコースに外すリードをバッテリーに期待している。

・ウォーレン・クロマティのバットは、グリップが極端に細く芯が極端に太い1kgを超えるバットだった。これほど扱い難いバットを使っても、ほとんどバットを折らなかったのは、スイングがナチュラルで腕の振りぬきが良かったからではないか。

・現役時代一番イヤだったバッターは高木豊。突然バントの構えをしたり、一球ごとに打席を外したりされる。バットコントロールも良く、インパクトの瞬間のハンドワークで打球を飛ばす位置を変えられた。

・高木豊に比べれば落合博満を打席に迎えたときのほうが気が楽だった。読みを優先させるバッターで、何より自分より給料が高かった。ホームラン以外なら勝ちと考えていたので、結果を気にせず投げられた。読みが外れれば三振もするし。

・カーブを待っていてストレートを投げられたら、どんなバッターでも対応できない。しかし、落合博満は対応できた数少ないバッターの一人だった。長嶋茂雄もそうだったろう。彼らは天才。

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