2010年7月18日日曜日

*読書メモ:経済学的思考のセンス

選手の球団間移動の自由は、一人勝ちをもたらすわけではない。経済学の答えは、「球団の経営目的が利潤を最大すること」にある。ファンがどちらの球団が勝つかわからないというスリルを楽しんでいるかぎり、球団間の戦力均衡は保たれる。

ルイス=シュメリングの逆説:対等な実力の二人のうち、ルイスがもっと強ければ、ルイスの人気がもっと高まって、より高い所得を得られただろうか? 答えはNO。ルイスがもっと強ければ、シュメリングと力が拮抗していた場合に比べてより低い所得しか得られなかっただろう。つまり、スポーツにおいては結果が予測できない場合に、観客動員や球団の利潤が最大になるということ(都築注:戦前のアメリカで人気を博したボクシングヘビー級チャンピオンのジョー・ルイスとマックス・シュメリングのこと)。

野球ファンが好みのチームが勝つことに満足していて、勝率が高い場合に観客動員数が増える場合は、戦力均衡が達成できない。しかし、この問題には簡単な解決策がある。球団の参入を自由にしておけば球団の戦力バランスは達成できる。人口が多く収益が高い地域により多くの球団が参入してくることで、結果的に戦力均衡が達成される。

一人勝ちが生じる原因は、FAやドラフト形骸化ではなく、球団の参入や売買が制限されていることだ。日本プロ野球の問題は、参入規制を強くしたまま、ドラフト形骸化を進め、FAを導入したことにある。悪役が弱すぎるとスリルを少しも楽しめないものだ。

プロ野球選手の年俸が高い理由について。一般家庭におけるプロ野球への支出は、例えば子どもの教育などへの支出に比べて極めて低い。しかし、一人一人のファンの支出が少なくても、TV放送により一流選手に人気が集中するために、一人の選手が膨大なファンを獲得し、莫大な額の年俸を手にする。

一流選手と二流選手の試合が同じ料金でTV観戦ができるのであれば、わざわざ二流選手の試合を見る必要はない。だから、一軍選手と二軍選手の年俸格差は大きい。同じことは大リーグとプロ野球の関係についてもいえる。一流選手の海外移籍を止めるためには、プロ野球を世界レベルにするか、TV観戦ではなく球場でなければ味わえない価値を高めて観客動員数を増やすしかない。

感想:日本プロ野球の課題を解決するための方法は、いずれもハードルが高いものだ。ただし、唯一導入のハードルが低く、やろうと思えば来シーズンから始められる一手がある。答えは「外国人枠の撤廃」だ。その結果、9人全員外国人のチーム――中日ドミニカンズとか阪神3A’sとか――ができるかも知れない。ただし、そういったチームは長期的に見て客離れを起こすだろうから、中長期的には日本人と外国人が丁度良いバランスで均衡するだろう。また、外国人の参入が自由になることで選手間の競争はこれまでとは比べ物にならないほど激しくなるので、球界全体のレベルアップは確実に達成されることだろう。結果、日本プロ野球のレベルは、現在よりもメジャーリーグに近づく可能性が高くなり、一流選手の流出も緩和できる(=ファン離れを止める)はずだ。

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