2010年7月16日金曜日

2010年上半期に読んだ本・ベスト5

blogと一緒に始めた『読書メーター』の管理人さまより、「2010年上半期読んだ本ランキング発表!」というメールをいただき、これに触発されての思いつき企画です。「今年発売」じゃなくて「今年読んだ」というところに注意してください。

というわけで、早速発表。

★第五位:もしも月がなかったら―ありえたかもしれない地球への10の旅(東京書籍)

◆読書メーターの感想:風が吹けば桶屋が儲かる――という類のハナシの大風呂敷版。発想の飛躍と学術的裏づけのバランスが丁度良くとっても面白かった。視覚、聴覚、嗅覚以外のコミュニケーションの可能性がありえたなんて……。こういうIFものには弱いので、評価が甘いかも知れなけど。

*ここ1年くらいの就寝パターンは、「21:00~22:00には床に入って、30分くらい読書しながら寝る」というものなのですが、この本を読んだときは、「21:30頃に読み始めて、2:30頃まで一気読み」でした。宇宙とIF話とSFと生物学が好きな人は必読です。



★第四位:「環境主義」は本当に正しいか? チェコ大統領が温暖化論争に警告する(日経BP社)

◆読書メーターの感想:管理人が経済学博士(チェコ大統領)、取り上げているテーマが環境主義反対派の論文という「ハイクラスな2chまとめページ」的な内容。「環境主義=新手の社会主義」との見方には大納得。環境保護には賛成だけど、環境主義には反対ですよ。ええ。

*感想はblogにある通り。学術的な話はビョルン・ロンボルグの論がメインなので、正直、新味はない。ただ、共産圏で苦労した大統領が語る、「社会主義はおっかねぇ。社会主義は信用できねぇ」のハナシには重みがある。



★第三位:帝国陸軍の栄光と転落(文春新書)

◆読書メーターの感想:別宮史観の集大成。これまでの著書の中では群を抜いてわかりやすい。統帥権とシビリアンコントロールに関する“誤解”には蒙を啓かされた。それにしても「試験秀才が国を滅ぼす」のは、中国も日本も同じということか。

*別宮氏の本は全て読んでいるけど、この本は数多ある“別宮本”の決定版といっていいでしょう。統制経済(=社会主義)批判、陸軍悪玉論(=海軍善玉論)への疑義、山県有朋の再評価など、10年後には通説になっているであろう所論がわかりやすく解説されている。といっても歴史本としては“中級者以上”を対象に書かれているので、日本近代史について高校教科書レベルの知識を仕入れてから読むのがベター。



★第二位:眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く(草思社)

◆読書メーターの感想:世に出ている全ての科学本を読んでいるわけではないので、断言することは憚られるが、それでも言いたい。この本は00年代に出版された一般向け科学本のなかで、最も重要な一冊だろう。シンプルだが説得力のある説は、文字通り“コロンブスの卵”。内容の9割以上が仮説の検証(前置き)であるため、読者によっては冗長に感じるかも知れない。そんな方には、9章から読みすすめることをオススメしたい。

*カンブリア大爆発については、スティーヴン・ジェイ・グールドの『ワンダフル・ライフ』を契機に一般に浸透し、これまでに様々な仮説が立てられ、数多の本が出版されているけど、同書はこうした“カンブリア本”の最高傑作(もちろん現時点でのハナシ)です。



★第一位:競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)

◆読書メーターの感想:現時点で今年のベストワン。「一般向けの経済学入門」といった趣のエッセイ本だが、この手の本にありがちな扇情的なところは一切ない。<競争と規制>について、わかりやすい喩えと明晰な論理で解説している。それぞれの論の典拠がハッキリしているところも好ましい。同じ中公新書の名作(『地政学入門』『ゾウの時間ネズミの時間』など)に匹敵する一冊。

感想はblogにある通り。この一冊で、大竹文雄氏は手前の中で「大竹氏」から「大竹先生」へとランクアップしました。その後、大竹先生の他の著作も読んでみたんですが、基本、芸風(持ちネタ)が一緒なので、どれか一冊読むのであれば断然同書をオススメします。



今のところ、一位と二位の差が大きく、二位と三位には超えられない大きな壁があるという感じでしょうか。ギリギリ選外は「ろくでなし三国志 本当はだらしない英雄たち」(本田透著。ソフトバンク新書)「偽書『東日流外三郡誌』事件」(斉藤光政著。新人物往来社)の2冊。あと、兵頭二十八師の本については、手前の中で「永世名人」的なポジション――一頃の『BURRN!』のベストプレイヤー投票で、キーボード部門一位が延々とジョン・ロードだったときのようなポジション――を占めているので、ランキングからは外しています。ページ右の「Recommend」にある本は全てオススメですよ!

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