2010年2月12日金曜日

日本プロ野球に八百長はない……と思う

台湾野球の八百長事件で、中込伸(阪神)と張誌家が起訴された。台湾野球の八百長は、タイにおける軍部のクーデターと同じくらい、アジアにおける定例イベントとして定着した感がある。ただ、日本人が起訴されたのは今回のケースが初めてじゃないかな。

どういう事情――台湾ヤクザに脅されていたとか――があったかはわからない。でも、話を持ちかけられた時点でケツまくっても良かったんじゃないかなぁ。台湾球界の規模を考えれば、八百長の報酬はせいぜい百万円前後だろう。これで残りの人生を棒に振るのは、あまりにも割が合わない。八百長に関わったとなれば、日本に戻っても仕事はない。独立リーグや少年野球のコーチ、スポーツ店経営なども全てペケ。阪神時代の後援者にすがるのも難しいでしょう。

日本では八百長はないのかって?

多分、ない。黒い霧事件で痛い目を見ているし、何より選手の年俸が高いもの。

もし、八百長を成立させるのであれば、ピッチャーであればローテ級かセットアッパー、クローザー。野手であればレギュラー級を買収する必要がある。年俸を基準で見ると、いわゆる“一億円選手”クラスというところだろう。このクラスの選手でなければ試合の帰趨を左右できないからだ。

で、黒い霧事件当時における“一億円選手”の年俸水準はどうだったか? 答えは一千万円。西鉄のエースだった池永正明の年俸である。村山実(阪神)も江夏豊(阪神→南海→広島→日本ハム→西武)に、「一流なら給料袋が縦に立たなあかん」(百万円の札束が10個になれば縦に立てられる)といってたし。

池永正明が預かったとされる金額が百万円で、年俸の1/10。現在よりも遥かに野球賭博が盛んだった時代でさえ、買収金額はこの程度だった。となれば、西日本で細々と続けられている現在において、一人の選手を買収――八百長を成立させるためには、当然複数の選手を買収しなければならない――するために数千万円も出せるとは考えにくい。

といっても、野球賭博とは違った次元でヤオっぽいことはあるのかもしれない。

「『俺の前にゴロを打ってこい』 サード前にゴロを打つと、深く守っていた●●さんはファンブル気味に一塁へスローイング。内野安打となった。おもしろいもので、スランプの打者は1本のヒットで目が覚める。お陰でプロ入り初の3割を達成できた」
「当然“お返し”がある。●●さんの打席、ファーストの俺もわざと深く守り、セーフティバントにダッシュが遅れたフリをした。お互いにヒットを1本ずつを稼いだのである」

これは愛甲猛(ロッテ→中日)の自伝『球界の野良犬』に描かれたエピソードだ(ちなみに●●は自主規制。著書には実名で書かれている)。これも20年前の出来事なので、現在はどうなっているのかわからないけどねぇ。

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