元日刊現代の記者・赤坂英一氏の新刊『プロ野球二軍監督』(講談社)を読みました。プロ野球OB以外の野球本は基本的に取り上げないというのが、当blogで決めたルールだったりするのですが、何でそんなルールを課したのかといえば、「読み物としてのクオリティの低いものが多くて、一々取り上げていたら腐すばっかりになってしまうから」という事情があるためです。言葉を換えればクオリティの高い本があれば、バンバン取り上げてもOK! というわけですよ。
で、この本ですが野球本として普通に面白かったです。多分、この四半期に出版されたもののなかでは一番面白いといってもいいでしょう。ただ、全編通して「鉄拳制裁」を肯定的に取り上げている(というか、「鉄建制裁」しても文句を言われなかった昔は良かった論を論じる)ところは大いに疑問でしたが。
中身について一々説明するのも野暮な本ではあるので、興味のある人は図書館で予約するかAmazonをポチっていただきたいのですが――少なくとも、「読んだ時間を返せ!」みたいなことには絶対にならないことは保障します――、じゃぁなんでこんなエントリを書いているのかというと、大久保博元の語る暴行事件の“真実”に「う~~ん……」と唸ってしまったからなんですよ。
菊池雄星投手の門限破りを巡って、大久保が注意したというハナシは、報道にある通りなんですが、「工藤公康投手を交えた食事会に菊池投手が来なくなった件」については、手前が知っている報道内容とは随分違うようで――
「工藤さん(公康、10年シーズンで戦力外)が雄星を食事会に誘って、ぼくが雄星の希望した日に寿司屋を予約したんですよ。そしたら、別の予定が入ったから欠席しますと言って、平気な顔してる。あのな、先輩やコーチに対してそういう態度はないだろう、工藤さんに謝っとけよって言ったんだけど、雄星はこたえたふうがない。逆に、なんで自分が誤らなきゃいけないのか、と思っていたようですね」(230頁)
――とあり、これを素直に読む限りは、「投手陣を交えた食事会」というよりは、「工藤、デーブ、菊池のメシ会」という感じがします。少なくとも菊池投手の都合に合わせて予約したにも関わらず、菊池投手の都合でブッチしたのであれば、「そりゃデーブでなくても怒るわなぁ。てか、生ける伝説と寿司つまめるなんて機会を無駄にするかね? フツー」と思いますよ。
でもまぁ、これは“大久保の言い分”であって“菊池の言い分”でもなければ“真実”でもないのでしょう。『ゴッドファーザー』『ある愛の詩』のプロデューサーであるロバート・エヴァンス曰く、「どんな話にも3つの側面がある。相手の言い分、自分の言い分、そして真実。誰も嘘などついていない。共通の記憶は微妙に異なる」というわけですから。
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