2011年1月20日木曜日

落合博満、「なんと言われようとオレ流さ」:その5

●第四章:オレを変えたカミさんのインサイドワーク

 オレがこう言うと、よくシラーッとされたりバカにされたりするが、うちのカミさんはいいカミさんだ。ひと言で言うと、頭のいい女。機転がきくというか、先が読める。気配りもできるしね。
 おかげで、独身のころに比べると、こっちもずいぶん変わった。またまたガッカリされても仕方ないが、驚くほど家庭的な男になったから不思議。
(145p)

 独身時代は、球場から酒場へ直行。これを毎日欠かしたことがなかった。
(中略)
 なんだかんだでメシ代飲み代で月七十~八十万円、湯水のように金を使っていた。
 それが今では、真っ直ぐ帰るようになった。結婚していちばん変わったところと言えば、ここだろう。今は夜中の一時にはもう寝ているからね。おかげで、朝十時には目がさめるし、デーゲームでもちっとも苦にならない。
(146p)

 以前は飲む以外にも、打つ、買うと、遊びは三拍子そろってやっていた。
(中略)
 ちなみに、オンナは意外にオクテで、二十歳と十ヵ月のときが最初だったっけ。
 チョンガー生活が長かったので、二十歳代のうちにたいがいのことはやってしまった。だから、オレの場合、今さらぶり返して遊び歩いて、虚しい思いをすることもないわけだよ。
(149~150p)

 結局、女房というのは、自分の唯一の味方なんだ。もしかして敵になる場合もあるかもしれないが、そうなったらもう別れるしかない。
 一緒に暮らしている以上、お互いに味方同士で、助け合っていかなければウソだ。イザというとき、他人は誰も助けてくれない。ザマアみろという人間はいっぱいいてもね。なにかあれば、身内にさえ、ねたみがあるもの。
 ねたみなしに、心底、喜んでくれるのは、はっきり言って女房だけだ。
(151~152p)

 野球のことだけを考えていればいいような環境にあるから三冠王も取れた。またのろけと聞こえてもいい。半分以上、あいつのおかげなんだ。亭主は、ただただ棒振りをしてカネを持ってくればよかった。
(中略)
「あなたは野球なら野球のことだけをやっていないとおかしくなる人。髪の毛ひとつにしても私が切ってあげなくちゃいけないし、なにしろ手がかかる」
とカミさんにも言われるが、実にそのとおりだから仕方がない。
(152~153p)

 カミさんと知り合ったのは、ロッテに入団したばかりの昭和五十四年のことだ。
 最初はお互いの友人同士が顔見知り、それで二人ともなんとなく知り合いに、という程度の仲だった。年齢は、オレより三つぐらい上だろうとは思ったが、九つ上とはまったく想像もしていなかった。
(中略)
 その後、すんなり一緒になったわけではない。知り合ってから昭和五十九年の十二月に入籍して一緒に暮らすまでには、しばらく間があったんだ。
 それには過去、オレが一回失敗していることもある(昭和五十五年のオフに、キャンプ地・鹿児島で知り合った女性と結婚したが、翌春離婚)。
(157~158p)

「子供は、できたらでいいや」
 最近では、お互いにそう思うようになった。いれば何人いてもいいが、二人とも子供の世話になる気は全然ないからね。
 少なくとも、子供は親の所有物ではない。自然のままに放っておけばいいと思う。
 腹を減らしたら食べさせてやればいいし、眠ければ寝かせておけばいい。おカネも、あれば使ってもかまわない。多少物心ついてくれば、よしあしの判断なんて自分でできるわけだから、手が後ろに回らない程度に自由にさせてやればいいの。
 子供をガミガミ叱るのもどうかと思う。自分だってたいしたことないのに、自分のやってきたことを忘れて子供に押し付けようなんて、とんでもない。
(164p)

 ウソというのは、ひとつのウソが二つ、二つのウソが三つになって、最後には身動きがとれなくなる。いいカッコをするにしても、おカネを使って常に自分の能力以上に自分を見せなくてはならない。
 だから、オレは自分のありのままの姿で、自然に世の中を渡っていくのがいちばんだと思うし、そうして生きているつもりだ。
 自分流に生きるためには、ときとして突っぱねる頑固さも必要だ。
 それでダメなら、世の中、メシを食う手段は、野球だけではない。オレはどんなにキツイ仕事をやったって全然かまわない。
(169p)

――以後の本ではほとんど触れられていない私生活について、雄弁に語っている章。信子夫人の「特別手記“落合博満”と私」は割愛。

2 件のコメント:

  1. 2011年になりましたね。今年もブログ楽しみにしています。俺流、都筑さんのことですから相当美味しい部分をチョイスされていることかと思います(恥ずかしながら未読です)。殿堂も、二番手が北別府というのも微妙。今は中村ノリの行く末が気になっています。落合がまさかの出戻りを許すか?無いだろうな。。

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  2. あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。殿堂については、あそこに名前が出ている面々では「相応しいのはブーマーと佐々木だけじゃね?」というのが正直なところ。あと、ノリについてですが、正月に落合記念館に行った人曰く「(再雇用は)ない。二回同じ手は使えないでしょ」(2ch情報)とのこと。戦力的に見ても、内野なら新外国人と堂上弟、代打ならブーちゃんや福田を使いたいところですからね。むしろ、コーチとして迎える可能性の方が高いのかもと思ったりしています。

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