2011年1月18日火曜日

Podcast28 MIL短報・避難ver「来るべき対支戦争のカタチって?」

月末発売予定の『大日本国防史』にwktkしながらも、『食堂かたつむり』に憤慨したり、落合博満をリスペクトしたりしながら毎日更新しているところを見込まれてか、またもや手前にお鉢が回ってきました。というわけで、以下、『大日本国防史』を待ちきれないファン代表として、対支防衛に関する素朴な疑問をぶつけてみました。

都築有(以下、都築)――本年もよろしくお願いします。いきなりですが「エア・シー・バトル(ASB)」というのが米軍の大方針としてあって、これを日本が押し付けられて、こんど、「動的防衛力」とやらを閣議でも採用したという話なんですが、このへん、わかりやすくご解説を願えませんか?

兵頭二十八師(以下、兵頭)――承知しました。1980年代に「エア・ランド・バトル」というのがありましてね。もし、ソ連軍が西ドイツに、あるいは北鮮軍が韓国に出てきたなら、米軍は空中から逆越境して、敵の第二梯団以降を打撃してやろう、というドクトリンでした。後続梯団を叩かないと、最前線への圧力がいつまでも弱まってくれない……というシミュレーションからの結論でした。まあ、実戦で試すチャンスは遂に来なくて、ソ連が崩壊しちまいましたけどね。朝鮮半島ではまだこれは活きているはずです。で、こんどは「エア・シー・バトル」。ネーミングは、あきらかに、「エアランドバトル」の真似ですよ。

都築――対象は、中華人民共和国なんですか?

兵頭――特定国名は挙げないというペンタゴンの公式方針です。が、ASBの適用海域がまず西太平洋で、次がペルシャ湾だ……ってんですから、仮想敵の筆頭が中共軍であるのは間違いないです。1941年12月から1942年にかけて日本がやったような東南アジアの「アンチ・アクセス」達成、つまり米軍をその海域から締め出すという戦略を、シナは狙っているんだ、と見ているのです。

都築――その「アンチ・アクセス」を破れ、というのが日米の大命題になったのですか。

兵頭――ええ。日米プラス、韓国と豪州ですよね。豪州は、このASBドクトリンに沿って、すでに建設済みであるOTH(超水平線)レーダーの能力を、増強するはずです。韓国は、オサンとクンサンの空軍基地の格納庫を完全地下化したり、高速道路を臨時の滑走路として使えるようにするという工事を、強く米国から要請されるでしょう。タイとベトナムにも、有事にその滑走路を使わせろという要求をするだろう思われます。米軍の空からの対支包囲網ですね。そのためには、沖縄や九州やマリアナの航空基地も、シナからの地対地ミサイルによる第一撃をしのげなくてはならないわけです。フィリピンのクラーク基地群も再利用される可能性があります。

都築――米軍は、地上では中共との戦争はしないということなんですか。

兵頭――陸軍だけじゃなくて、海兵隊にも出番はありませんよ。空軍と海軍だけで対処しようというのがASBです。つまり、「シナ軍と陸戦はやらない/やりたくない」というのが、米国の国是です。だから、「海兵隊が抑止力」なんていうのは大嘘です。

手本とされる前例はあって、それが第二次大戦中の東大西洋でのUボート狩りです。このとき米国は、航続距離の長い四発機のB-24爆撃機を対潜機に改造して、アゾレス諸島などから作戦させ、いちじるしい戦果をあげました。潜水艦は空から狩るのがいちばん効率的だと分かったのです。水上艦護衛だけだったなら、ドイツの「アンチ・アクセス」は破れなかったと総括されています。

都築――イギリスを日干しにしようとしたのですよね。ドイツはUボートを使って。

兵頭――そう。北米からの援助物資を近づけないようにしたかったのです。しかし、そのドイツの「アンチ・アクセス」戦略は、B-24の対潜投入で破られたのです。

これを対支で再現する気らしいですよ。米軍は。

都築――「ワシントンと北京は密約関係にあり、日本を食い物にしている」と主張する人が多いですよね。実は手前もコロっと転向しそうになることがあるんですけど……。

兵頭――まあ、米海軍関係のウェブなどをお読みになることをおすすめしますよ。もっとエグいことがいっぱい書いてありますよ。

都築――たとえばどんなことですか?

兵頭――もう、具体的な米軍の対支戦法まで描写されているのです。

まず開戦劈頭、いきなりシナの衛星を緒戦で盲目化してしまうそうですよ。これで米艦隊の所在が把握されないようにするのです。もちろんサイバー・アタックと並行してね。

こういう、やられた以上に強くやりかえすというノリは、まさに「エアランドバトル」の衣鉢を継ぐものでしょう。「侵略」という超えてはいけない一線を敵国が越えた瞬間、そこからは、何でもアリ、になるわけです。

シナ本土の陸上に基地がある洋上偵察手段や弾道弾は、米軍の長射程ミサイルによって破壊するそうです。

米空母の艦上戦闘機は、前方で作戦し、米空軍の空中給油機や輸送機やAWACS機や偵察機を護衛するそうです。

米空軍は、米海軍機に対して、空中給油などで協力します。

また米空軍機は、対潜作戦に参加するそうです。B-2ステルス爆撃機によって「攻撃的機雷敷設」(offensive mining)を行なうんだそうです。

米海軍の水上艦艇は、対支の海上封鎖を実施しますが、これがなんと、マラッカ海峡封鎖だそうです。「distant blockade」と称しましてね。なにも南支那海で海戦しなくったって、マラッカ海峡を封鎖するだけでシナ経済は干上がってしまうのだということをよく見積もっているんですよ。

都築――そうなりますと日本にも原油は入ってきませんから、たいへんな話じゃないですか。

兵頭――まあ、シナ人も馬鹿じゃないので、このASBを検討して、資源配分を変えてくるだろうとわたしは思っています。つまり潜水艦や空母じゃなくて、軍隊でもなくゲリラでもないもの、「漁政」や「海監」を大増強することにカネを使う。それと民間船のコラボで近海を支配しようとするでしょうね。

しかし米国人には、どうもそんな想像力が働かないらしくて、対支用に、これから無人潜航艇(水中ロボット)を全力で開発するとか言っていますよ。

都築――正々堂々の戦争しかイメージできないのでしょうか。

兵頭――間接侵略がイメージできないのですね。ほんと、正面装備の話ばかりに熱中していますよ。

航続距離が短い有人攻撃機、たとえば米海軍のF-18 Super Hornet だとか、空軍が買おうとしているF-35(Joint Strike Fighter)には、もう期待はしないようです。シナ軍の対空ミサイルでやられる可能性がありますのでね。

Littoral Combat Ship(新鋭駆逐艦)は、囮として活用するそうです。

また、もっとたくさんのSSBN(戦略核ミサイル原潜)をSSGN(通常弾頭の巡航ミサイルを100発以上発射できる原潜)に改造するそうです。

都築――そうしたハイテク装備に決して威力を発揮させないように巧みに仕向けるのが、彼の国の「政治」ですもんね。

兵頭――おっしゃるとおりです。

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