2010年12月18日土曜日

Podcast28 MIL短報・避難ver「新大綱は出たけれど……」

内容はどうあれ毎日更新しているニート状態なところを見込まれてか、またまた手前にお鉢が回ってきました。というわけで、以下、新防衛大綱のことについて訊いてみました。

都築有(以下、都築)――新大綱が出そうですね。

兵頭二十八師(以下、兵頭)――すでに新聞社には草稿が渡されているみたいで。17日に Charlie Reed さんと Hana Kusumoto さんがUpしている記事「Japan shifts defense strategy toward N. Korea, China」によると、動的抑止のことを「dynamic defense force」と英訳させているようですね。まあ要するに、対ソから対支に正式に切り替えることの、公式表現。防衛大綱のことは「National Defense Program Guideline」と訳されています。ちなみにSenkakuのことはシナ語では Diaoyu(s)というらしい。

都築――与那国島からは自衛隊の偵察機を運用するんでしょうか。

兵頭――ネットで17日の Mari Yamaguchi さんの記事「Japan's new defense policy focuses on China」も読んだのですが、大綱案には偵察機と書いてあるだけのようで、機種は分からないですね。

ちょうど米墨国境のエルパソ郊外に、メキシコ警察が飛ばしていたイスラエル製小型無人機の「Orbiter」が墜落したというニュースもあります。与那国守備隊だって、安い無人機で可いような気がするんですけどね。

ラジコンに興味のある人は、「Building the ultimate Ritewing Zephyr」という記事をググってみてください。市販素材だけで手作りしたグラスファイバー製のV形全翼機で、たった2kgなのに、高度4500mまで上昇して40分滞空して鮮明なビデオ映像を空撮・録画できてしまうんですよ。民間無線なので、海上でもコントローラーから30km離れるともうダメなんですが、こういうのを見たら、防衛省の技本がいかにこの分野で怠けているか、誰でも分かるでしょう。まあ、これも武器輸出が禁じられているせいなんですどね。

都築――自衛官はいまでも53歳くらいで停年なのに、さらに早期退職を勧告するらしいですね。

兵頭――再就職支援を何もしないのでは、愛国心の使い捨てになってしまって大問題ですが、米軍並の再就職支援をしてやるのならば、これはアリでしょう。米軍ですと、いつまでも大尉から少佐になれぬ者は〇年でクビ、とか、あるみたいですしね。将校はそれでいいと思います。

従来、士、つまり上等兵から、曹、つまり伍長に上がれない者は、6年かそこらで退職です。これも、そのままで可い。

ちょっと心配なのは曹、つまり下士官にそれを適用すると、兵曹のモラルハザードを起こさないかということです。たしかにどうしようもないオッサンの2曹、1曹ってのはいるんですけどね。それも含めてクビにしないってことで、みんなの組織への忠誠は固まるんだというメリットも絶対にあったでしょ。中隊が一家になるわけですよ。

ソ連軍やロシア軍の、組織文化の上での最大の弱点が、プロ意識の高い下士官の不在にあるということは、夙に指摘されています。この前、グロナス衛星が3機、太平洋の藻屑になっちまったのも、燃料注入係が、液体酸素を余計に入れすぎて、プロトン・ロケットがやたらに重くなってしまったからだそうですな。そんなありえない凡ミスが起きちゃったりするのは、中間幹部にプロ意識が足りないからでしょ。中間幹部が気が利かないと、高給幹部がなにもかも心配しなければなりません。それでは効率的な分業作戦はできませんよ。

都築――戦闘任務員と非戦闘任務員で、俸給表に差をつけるという方向も、打ち出されているようですが。

兵頭――正しいと思いますよ。陸自増員案がとつぜん飛び出したときは、筋悪な提案するなよと思いましたが、最後に防衛省の役人さんは、うまくまとめたと思えますよ。有能ですよ。

ちょっと余談ですが、「分業によって人を楽にしてやる」ってことが、われわれ社会的人間の義務なんですよ。特に公務員はここに自覚的になれないとどうしようもないのです。国家が戦争に負けちゃう原因も、役人にこの自覚がないからなのです。

だから、さいきんの役人叩きの話も、見分けどころはここです。その役人は、他人様を楽にする分業をちゃんとやっているのか? やっているなら、政治家は、それを利用し、感謝するべきです。その政治家だって、おかげで楽になるんですよ。

叩かれるべきなのは、他人様を楽にする分業をちっともやっていないで徒食している、あるいはそれどころか、逆にこの社会に余計な面倒をつけ加えるだけの業務に熱中するような者たちです。これは役人に限りませんけどね。

かく申すわたし兵頭も自分でブログを立ち上げないで、こうしてひとさまのブログを間借りしているじゃないですか。これだって、そういう「分業」をすることが、老人で面倒くさがり屋のわたしにとっては、すこぶる楽だからに他なりません。お互いに楽をできるのが分業の醍醐味のはずで、どちらかが余計に苦労を抱え込むような分業なら、やめちまった方が可いのです。だから人々よ、わたしに最新コンピュータのレクチャーをするのはやめてくれ。老人に新たな芸を覚えこまそうとするな。

それでさいきんわたしは「共著」というものもキッパリとやめたのですけども、これも、わたしが楽にならずに苦労や面倒が2倍に増えるだけの企画となりがちであるからです。若くて元気なうちはそれでも構わないんですが、歳をとるとだんだんその負担が苦痛で堪えられなくなってしまうんだ。まあその意味でも、ズボラ化して、ひとさまを楽にしてやることができなくなっているオッサンの「曹」たちは、自衛隊という組織を出るべきでしょうな。

都築――2月の青木直人さんとのライブトークは苦労になるのではありませんか? いえ、テーマがテーマなので猛烈に楽しみではあるのですが。

兵頭――青木さんはあらかじめ航空券の手配などもしてくれていますので、こちらは何の苦労でもありません。身ひとつで出掛けるだけです。そういう企画ならば、よろこんで有り難く、どこだろうと参上いたすのは当然であります。

都築――苦労といえば、F-22やグローバルホークの取得要求は、自衛隊の苦労を増すだけということでしょうか?

兵頭――それはその通りです。さいきん、米会計検査院がF-22の表皮パネルの侵蝕問題についての報告を出しているようです。それを Graham Warwick さんがブログに2010-12-17にUpしてますな。下塗り塗装にクロム酸塩を使うか使わないかなんてことまでが、居ながらにして分かっちまう。いや、ホント、インターネットは人々を楽にするシステムですよ。これを考えた人は人類社会にとてつもなく貢献してくれましたよ。ちなみに最近すごいなと思って見ている和文のサイトは「蒼き清浄なる海のために」という、海保プロパーの人が書いているらしいとこです。「週刊オブイェクト」さんは休載中なので残念ですね。

まあF-22をもし空自が買っていたら、自衛隊はそれだけで破産していましたよ。グロホの筋の悪さは、わたしが縷々書いてきた通り。

韓国のストライクイーグルはたしかにカタログ・スペックは良いんですが、例の「法則」がやっぱり発動しているらしく、彼の国におけるリアルなパフォーマンスはぜんぜんダメらしいということも、インターネットのおかげで分かってきました。

都築――経済面の米中合作は、軍事面に及ぶのでしょうか?

兵頭――そんなガセを盲信しているのは、英語でニュースを読まない人たちだけでしょう。わたしも数年前までは横文字のナナメ読みができないレベルで苦労しましたが、慣れるに従い、カバーできるようになった。それで、これほどインターネット界の記者さんたちに楽にしてもらっているのだから、そのお返しの還元事業もせねばならぬと思い、「MIL短報」のようなことを無料でやっているのです。ひとつの社会的分業のつもりです。

最新のストラテジーページにこんな記事が出てますよ。「Skeletons In China's Closet」というのですが、シナ人考古学者が西域の古い骨のDNAを分析したら、56%はコーカサス人種、つまり白人系だったことが分かっちまったという。辺境守備のローマ兵が逃亡して入植したんだろうという仮説まで出ているそうです。

以前には、3000年以上前の長身・金髪の戦士の墓地まで発見されているんだそうで、どうも最終氷河期が終わった12000年前、白人種がいったん中央アジアを征服したのだということですな。

3000年前、インダス流域の土着ドラヴィダ黒人種が、アフガンから侵入してきたアーリア白人種に支配されたことは周知の史実ですね。これについての詳しいことは、拙著の『新しい武士道』(新紀元社)でも読んでくださいよ。

彼ら白人ががまたイランをも占領した。イランとは「アーリア人」の意味です。

で、こんな記事がなぜストラテジーページに載るかというと、シナ人に反発しているのは日本人だけじゃなくて、西側軍事関係者ならば全員反発しているからなのです。この「気分」は、経済記事だけ読んでいたら分からないものです。列強の政治指導者は、経済記事の前に軍事記事を読んでいます。つまり、「気分」を軍事関係者と共有しているのですよ。

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