2010年8月16日月曜日

私家版・兵頭二十八の読み方:その7

**「私家版・兵頭二十八の読み方」のエントリでは、日本で唯一の軍学者である兵頭二十八師の著作を、独断と偏見を持って紹介します**

このほど翻訳された『ロボット兵士の戦争(Wired For War:The Robotics Revolution And Conflict In The 21st Century)』(P.W.シンガー著、小林由香里訳。NHK出版)を、ようやく読み終えました。感想は一言、「とっても面白い!」。2010年代にあらゆる分野で革命を起こすであろうロボットについて、これほど丹念に取材し、ありとあらゆる切り口から深く突っ込んで書ききった本は中々ないと思います。

翻訳も素晴らしく大部であるにも関わらず読みやすいところも特筆すべきでしょう。リーダビリティという点ではサイモン・シンの一連の著作に半歩及ばない感じですが、ミリタリーかSF、ロボットが好きな人であれば、がっつりハマること請け合いです。全てのロボット関係の本を読んだわけではないので断言することは憚られますが、少なくとも「今年イチ押しのロボット本」であることは間違いないといえましょう。

で、この本を読んで改めて兵頭二十八師のロボット本である『「自衛隊」無人化計画――あんしん・救国のミリタリー財政出動』(PHP研究所)を読んでみたんですが、再読後の感想は「やっぱいいこと書いてるわ!」。発刊から一年経って、改めて同書の良さを噛み締めています。

去年、新刊として読んだときには、正直、「あと5~10年でロボットの時代が来るのかねぇ?」と、かなり疑問符をつけながら読んだんですよ。確かにロボットが進化して軍や家庭に浸透するのは間違いないんだろうけど、そういう変化がすぐに起きるとはちょっと想像できないと思っていたわけです。だって、1年前の時点では『ASIMO』も『Big Dog』も“研究者の高いオモチャ”みたいなものであって、すぐに実用化する目途なんて立ってなかったですしね。

それが1年経ってみたらどうなっていたか?

・車椅子型のロボットや高齢者向けコミュニケーションロボットが百万円台、ロボットアームが買えるまでにコストダウンしているというハナシ。
・無人偵察機が戦場にあって当たり前の状況になっている。いまや、ハリウッドサスペンス映画の定番アイテムになっているというハナシ。
・血圧、血糖値などのを読み取る「バイタルセンサー」を椅子やベッドに仕込んだ高齢者向け住宅を、某大手住宅メーカーが数年内に事業化するというハナシ。

――が現実になっているように、ロボット技術が目覚しく進歩(浸透)。昨年12月には政府の新成長戦略で「高齢者用パーソナルモビリティ、医療、介護ロボット等の研究開発・実用化を促進する」という文言が盛り込まれるなど、まぁ、軍師が書いた通り「ロボットの時代」がどんどん近づいてきているわけです。一年前は「ちょっと早すぎる本」と思っていたけど、いまになって「絶妙のタイミングで書かれた本」へと認識を改めているところです。

ただ、各企業や大学の研究状況にしても、政府の方針にしても、それはそれで素晴らしいことではあるのですが、厳しいことを言うと「世界的なトレンドに遅れないよう、とりあえずロボットに取り組んでおこう」という姿勢でしかないようにも見えます。ロボット実用化に向けて資金を投入し、開発を進め、結果を出す――いわば一石一鳥の手といえます。

でも、ここまでロボット技術の進歩と浸透が早いなかで、一石一鳥の手だけで間に合うものなのか? どうせ打つなら一石二鳥、一石三鳥の絶妙手を打った方がいいんじゃないか? せっかちな手前なんかはこう思ってしまうわけですよ。

「一石二鳥、一石三鳥の絶妙手なんて軽々しく言うけど、じゃぁ具体的にどういう手を打てばイイわけ?」

という問いかけに、完璧な形で答えているのが『「自衛隊」無人化計画』なわけです。

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