2010年8月14日土曜日

*読書メモ:ロボット兵士の戦争(第1部)

目次と概略

◆序文:なぜロボットと戦争の本なのか
「本当に重大なできごとがしばしば見過ごされてきたことは、歴史を振り返れば一目瞭然だ。グーテンベルクが印刷機を発明したとき、誰も祝賀パレードを行なわなかった」
「私たちは何か重要なできごとのさなかにいる、おそらくは戦争とテクノロジーの大変革の真っただなかにいるのかもしれない――そんな思いが募っていった」(26~27頁)

◆第1章:はじめに――ロボット戦争の光景
・即席爆発装置(IDE)処理を爆発物処理班に代わってこなすロボットから、無人偵察機プレデター、自動小銃からロケット砲までを乗せられる戦闘ロボのSWORDSなどの紹介。
「戦争が人類だけのものだった時代は終わりつつある。私たちはロボットが戦争に行く時代を迎えている」(66頁)

◆第2章:ロボット略史――スマート爆弾とノーマ・ジーンと排泄するアヒル
・「ボーカンソンのアヒル」「ギリシャ神話のタロス」「トルコ人」「アフロディテ作戦」(ジョセフ・ケネディJrが戦死した自動操縦爆弾飛行機の作戦)など、ロボットの歴史を振り返る。

◆第3章:ロボット入門
・ロボットの定義、AI、センサー、レーザー、エネルギー源などの開発状況など。『ニューロマンサー』の頭にプラグは鋭意開発中。DARPAの調査によれば“ケンタウロス型”のロボットが将来軍事利用されると多くの専門家が予想しているという。ターミネーター2のT-1000も夢ではなくなる可能性もあるとのこと。

◆第4章:無限を超えて――指数関数的急増傾向の力
・ムーアの法則にある通り、あらゆるモノは指数関数的に変化する。ヒトゲノム計画におけるゲノム解析、米特許商標庁が決定する毎年の「重要な発見」の件数、脳スキャンの解析なども指数関数的に増えた。古代ギリシャの重装歩兵は500人でフットボール競技場くらいのスペースを守っていた。南北戦争時代にはこれが20人になり、第一次大戦には2人、第二次大戦には1人が競技場5つ分をカバーするようになった。現代は1人で競技場780面分をカバーしている。ロボット技術、生産コストが同じようにならないことがあろうか?

◆第5章:戦場に忍び寄る影――ウォーボットの次なる波
・将来の軍事ロボットのあるべき姿を予測。ナノボットは夢ではなく、分子レベルで働く兵器の可能性は十二分にある。無人トップガンに宇宙の真空空間でのロボット同士の戦いも。現実は限りなくSFに近づきつつある。

◆第6章:いつも輪のなかに?――ロボットの武装と自律性
・高性能で自律的なロボットが武器を持つ可能性というテーマは、この分野の全ての人々が避けたがっている話題。多くの人は「輪のなか」に止まる(=常に人が輪のなかにいて、ロボットを操作する)ことを望んでいる。しかし、歴史は常に人間が「輪のなか」を抜け出していた。ノルデン爆撃照準器しかりイージスシステムしかり。ロボットが自律性を持てば、人間にできない反応で判断でき、通信途絶のリスクも背負わなくて済む。戦争における意思決定を人間が独占している状況が今後も続くかどうか?
「ロボットが『人間に匹敵するか』というのは、おかしな言いまわしだ。戦車は歩兵の能力に『匹敵』するだろうか。いや、両者は別物だ。飛行機は鳥の能力に『匹敵』するだろうか。なるほど、飛行機は鳥より速いが、鳥ほどうまく着地することも長く飛ぶこともできない」(196頁)

◆第7章:ロボットの神――機械の創造主たち
・ロボット開発者とスポンサーであるDARPA、ONR(米海軍研究局)の話。科学者は長いこと戦争に関与してきたが、兵士、戦場からのフィードバックはほとんどなかった。しかし、現在は違う。無人システムがこの分業を崩壊させた。これにより恐ろしいほど早く改良が進んでいる。

◆第8章:SFが戦争の未来を左右する
・SFがどれほど軍事技術の開発に貢献したかを検証。オースン・スコット・カード、グレッグ・ベアのインタビュー(!)。『エンダーのゲーム』は米軍幹部が「良い戦士になるための必読本」として部下に薦める本の一冊。ウェルズ、ヴェルヌの革新性。携帯電話、サイバーナイフ、クイックタイムはスター・トレックからのインスピレーションを元に発明された。
「SFは『もしも』の世界。つまり、爆弾の作りかたを正確に指南するのではなく、こういう爆弾を作ったら、『博士の異常な愛情』みたいなことになる、と知らせる」(250頁)

◆第9章:ノーと言うロボット工学者たち
・軍用ロボット開発を拒否する科学者の話から、科学と倫理の狭間について追う。ロボット工学は原子物理学の二の舞を演ずるのだろうか?





0 件のコメント:

コメントを投稿