**「私家版・兵頭二十八の読み方」のエントリでは、日本で唯一の軍学者である兵頭二十八師の著作を、独断と偏見を持って紹介します**
さて、『「自衛隊」無人化計画』で語られている兵頭師の主張は、ともすれば荒唐無稽なハナシにも聞こえるかも知れません。確かに政治家や官僚、研究者にインタビューをしているわけではなく、その主張の多くは文献(古書と海外ニュース)をベースとしたもので、所々で著者の大胆な予測が挟み込まれる――という本なので、見方によっては“トンデモ本”(実証的なデータを欠き、著者の思想に都合の良い情報と論理で構成された本)の類といえなくもないわけです。
ただ、兵頭師が同著を上梓するにあたって目指したことを考えると、“トンデモ本”と指弾するのは少し浅薄ではないかと思うんですよ。
手前が考える、同書で兵頭師が目指したことは、
・「<ハイテク軍備一点かけながし>の財政出動」というアイディアの提示
・ロボットが21世紀の世界を変えるという予測の提示
・こうした時代の変化にいち早く対応するための新情報と可能性の提示
・核武装に代わる日本の安全保障に必要な切り札の提示
・少子高齢化社会、移民政策に対応するための政策アイディアの提示
と、大きくわけてもこれだけあります。それぞれ1冊の本になるテーマですが、全てのテーマに真正面から取り組み取材、調査をやっていたら、1冊上梓するために数年の時間が必要になることでしょう。
このようにして10年近くかけ、これらの主張をまとめて上梓したとして、その頃にはこれら一群の本の内容がすっかり古くなってしまっているのではないか? とりわけロボット開発の世界は、パソコンやインターネット以上に進歩の度合いが早いだけに、最新情報もすぐに陳腐化してしまう危険性があるのではないか?
そんな懸念から、敢えて“トンデモ本”と指弾されることは百も承知の上で「いま、訴えなければならないこと」を目一杯詰め込んで上梓したのだ――と考えています。
実際、1年前は“トンデモ本”に近いのでは? と思っていたのですが、今日のロボット開発の現状を振り返ってみれば、かなりの部分で兵頭師の書いていたことがズバズバ当たっているわけで、「実は“警世の書”であったのだなぁ……」と大いに見直しているところです。
兵頭師が15年前に主張していた「核武装論」も、当時はトンデモ扱いされていましたが、現在は少なくとも保守論壇で実現の可否が議論される程度には市民権を得ています。昨年から主張している「ロボット開発論」は、恐らくあと数年もしないうちに堂々と市民権を得ることでしょう。そのときまでに「<ハイテク軍備一点かけながし>の財政出動」という大胆な政策――現実的には兵頭師の提案がそのまま実現するというよりは、その提案のエッセンスを汲み取った安全保障への投資拡大という形で実現するのではないでしょうか――が顧みられることになるのか否か? その行く末が気になる人はもちろんのこと、『ロボット兵士の戦争』を読んでハマった人にも、同書の精読をオススメします。
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