2010年8月2日月曜日

『龍馬伝』がひどすぎる

煮込みま~め、埃ま~みぃれ♪ でお馴染みの大河ドラマ『龍馬伝』。
「毎度毎度、35分頃にウウ~ウウ~ウ~♪ の歌声とともに愁嘆場を持ってくるのがウザい」とか「大事なことをことごとく大声で言わなくてもいいじゃん」とか「ていうかみんながみんな怒りすぎ」とか「記録に残ってないからって想像だけで勝手にキャラを動かすなよ」とか「画面が暗いから、一々テレビの明度を最大限に上げてんだよ! こっちは!」ということをもって、ひどすぎるといいたいわけではありません。

じゃぁ何がひどいのかって? そりゃシナリオに決まってますよ!

史実改変も面白ければ全然OK! な手前でもねぇ、あまりにもあり得ない史実改変には断固NO! を突きつけますよ。

「西郷隆盛が薩長同盟の談合をするため桂小五郎に会うべく下関へ行く途上、直前で翻意して京都へと進路を変更する」のエピソード。

Q:西郷はなぜ翻意したのか
A:藩論がまとまらなかったから

というのが良くある解釈ですが、史実を一捻りしたい『龍馬伝』のスタッフとしては、より<意外性のある理由>を考えたかったんでしょう。その意気やよしです。

でもねぇ、その<意外性のある理由>というのが「薩摩の軍船に乗り込んだ幕府隠密に、薩長同盟のことを感づかれそうだったから」ってのはどうよ?

TVで放送されたシーンでは――

・船の中、黒っぽい服装(?)の武士(隠密)が箪笥っぽい棚や机の書類を荒らしている
・そこへ何気なく西郷が訪れる
・西郷に気づいた隠密が、西郷に先制攻撃
・不意を打たれるも見事な体術で隠密を取り押さえる
・物音に気づいた薩摩武士が部屋に踏み込む
・西郷、「隠密じゃ。一人取り逃がした」(大意)というセリフ

――という感じでした。

一々不自然な点を指摘するのもバカバカしいけどね、敢えて指摘させていただきますですよ。

・どうやって船に乗り込んだのか? 軍船のクルーに成りすますなんて、大名行列にもぐりこむより難しい。水夫の調練を経た軽輩or交渉・護衛要員の武士しかいないはずだし、いずれも薩摩者で固めるのが常識だし、何しろ260年来最も隠密が入りづらい薩摩の軍船だからね。どう考えても不可能だろう。100年来のスリーパーでもいたのか?

・50歩譲って上手く潜り込めた――例えば「新造戦艦でクルーごと雇った」とか「薩摩の軍船ではなく外国の軍船だった」とか。両方とも限りなくあり得ないけどね――として、艦長室(士官室)をがら空きにするバカがどこにいるのか? 艦長室(士官室)の前に守衛の気絶したシーンとかを挟み込んでおけよ。

・100歩譲って軍船から逃げられたとして、一体どこに逃げるんだ? 周りは日本海だぞ。近くにモーターボートとか潜水艇でもあったのか? 1000歩譲って沿岸に近かったとしても、そこに泳ぎ着くまでに書類は濡れて読めなくなっているだろうし(まさか書類がボールペンで書かれていたわけではあるまい)、泳ぎ着いた先に天領はないから他藩の者に見咎められれば不審者として即切り捨てられるだろうよ。

って、ちょっと思いついただけでこれだけ大きな穴を指摘されるgdgdなスパイ工作なんてあり得ないでしょう。「情報漏えいを恐れた西郷が薩長同盟の早期談合を翻意した」ってスジ自体は悪くないと思うけど――隠密芸者が長崎奉行所に薩長同盟を仄めかす注進をするシーンを映していたのも、情報漏えいを強調する意味があったんでしょう――、その“肝”となるシーンが何の説得力もないスパイ工作ってのがね……。

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