シーズン1最終回までのセル&レンタルが解禁となったので、期待で胸をパンパンに膨らませながら見たのですが……結論から言えば、『MADMEN』が回を追うごとに面白くなっていった(シーズン3最終話で感じるワクワク感は異常!)のとは対照的に、「後半失速したなぁ」という感想しか思い浮かびませんでした。これならシーズン1前半のクライマックスだった13話の地区大会(原題:Sectionals。DVDではVol.6)で自主的に視聴を止めておけば良かったのかも。
地区大会までは本当に面白いんですよ。ストーリーの運び方は丁寧だし、ミュージカルシーンも「ここぞ!」というタイミングで挟み込まれてくるから超印象的だし、何より大会までに諸問題が解決するのか否か――ってシーズン2まで放映してるんだから解決することはわかってるんだけど、それをどうやって料理するのか――が気になるように、「早く次を見せろ!」という物語の求心力があったわけです。
が、地区大会後の展開は、以上の美点が全部消えてしまいます。つまり、ストーリーの運び方が雑になり、ミュージカルシーンが乱発されて印象が薄くなり、州大会までの諸問題の解決方法についても「どーせ地区大会までと同じような展開になるんだろう」と予想されてしまうということです。
なぜ、このように感じたのか? 原因はハッキリしています。
『glee』が『がんばれベアーズ』的な成長物語である以上、“成長”(=ダメチームが成長して目的を達成する)してしまったから、物語の求心力がなくなってしまっただけなんですね。つまり、成長物語としては地区大会の勝利で終わったということであり、その後の展開は焼き直しにしかならないということ。『ドラゴンボール』でいうなら、「地区大会=ピッコロ」ってことです。
製作サイドもその点は十二分に承知していたんでしょう。シーズン後半は「完成度の高いミュージカルシーンを多く挟み込むことで、ゴージャス感を出す」という手を打ってきました。『ドラゴンボール』でいえば、ベジータ→フリーザと出てきて惑星をぶっ壊すような“戦闘力のインフレ”でストーリーを進めていく手法ですよ。
でも、『ドラゴンボール』はマンガ(アニメ)であり殴り合いだから、いくらでもインフレ状態を表現できるけど、『glee』は実写でありミュージカルだから、そこまでインフレ状態を表現できないわけです。そもそも、スタート時点で世界屈指の歌と演技の上手い人々(=ブロードウェイの有望株)を出しているので、すぐにインフレの限界に達してしまうわけですよ。実際、名実共に世界一歌と演技の上手い人――名作ミュージカル『Wicked』のオリジナルキャストであるイディナ・メンゼル(エルフィー役)とクリスティン・チェノウィス(グリンダ役)――も出ましたし。
【ニコニコ動画】glee:イディナ・メンゼルのパフォーマンス。
【ニコニコ動画】glee:クリスティン・チェノウィスのパフォーマンス。
結局、パフォーマンスの面でも地区大会までがMAXで、これを超えられなかったと感じました。
【ニコニコ動画】glee:地区大会の圧倒的なパフォーマンス。リア・ミシェルの歌いっぷりは凄いの一言。
もちろん、ミュージカルシーンの“PV”としての完成度がシーズン前半より格段に高くなっていたり、キャラが固まってきて(とりわけ頭が弱くて股の緩いブリトニーの造形が素晴らしい)ピンポイントで面白いエピソードがあったり、ゲストのオリビア・ニュートンジョンが「21世紀における自らのタイプキャスト」をノリノリで演じていたりと見所は多数あるわけですが、こうした美点も“枝葉”のことでしかなくて、“幹”であるドラマ部分についていえば、これ以上太くなりようもないですからね。シーズン3か4では主要キャストを卒業させて心機一転するらしいですが、これも“枝葉”ですし。
というわけで、Pilotを10回見返したくらいハマッた『glee』でしたが、シーズン2については、「レンタル解禁されたときに懐が暖かかったら借りようかなぁ」くらいの期待値で臨むことにします。
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