2010年9月18日土曜日

*読書メモ:一万年の進化爆発

◆目次
・第一章:概観――世の中で一般に信じられていること
・第二章:ネアンデルタール人の血
・第三章:農耕の開始による大きな変化
・第四章:農業のもたらしたもの
・第五章:遺伝子の流れ
・第六章:拡散
・第七章:中世の進化――アシュケナージ系ユダヤ人の知能の高さはどこから来ているか?

「人類の進化が過去一万年に緩慢になった、あるいは停止したという考え方がある。しかし実際には、むしろ加速している。本書のテーマは、現在、人類の進化は、ヒトの誕生以後六〇〇万年間の平均よりも約一〇〇倍も速く進んでいることを読者に納得してもらうことである。ペースが非常に急速であるせいで、人類は有史時代を通じて肉体的にも精神的にもかなりの変化を遂げてきた。サルゴンとインホテップは、現代人と文化的に異なるだけでなく、遺伝学的にも異なっていたのである」(7頁)

人類の進化についての通説は、4~5万年前のヨーロッパで文化的な進化とヒトの生物学的進化の終わりを特徴とする『大躍進』が起こり、その後は進化が凍結した――というもの。

この考え方は、環境は静的なものだということを基礎としているが、実際には過去5万年のあいだに変化の嵐を経験してきている。旧石器時代から新石器時代、農業の開始、地理的な拡大……こうした文化的な革新は、人類が経験する選択圧を変化させた。

10万年前に至近距離から槍で狩りをしていたときの人類は筋肉質で骨太であり、体格を維持するために大量の食物を必要としていた。これが投槍や弓矢の発明により体重が軽くて足が速く、食物をあまり必要としない体格へと進化した。ブッシュマンは痩せていて身長150cmに満たない。

ヒトの言語が複雑さが現在のレベルに近づきつつあること、聴覚の変化に関する選択が起きたようだ。内耳に影響する多くの遺伝子に、最近選択を受けたことを示す痕跡が見られている。会話が複雑になるにしたがって、騙しのテクニックも磨かれただろう。

進化的変化は本来非常に進行が遅い。そのせいで、著しい変化は何百万年単位で起きると思われている。スティーヴン・J・グルード曰く「この4~5万年のあいだに、人類には生物学的変化はまったく見られなかった。私たちが文化や文明と呼んでいるものはすべて、同じ肉体と頭脳の上に築かれたものだ」。

しかし、この考え方は誤っている。飼い犬からトウモロコシの粒まで、最近の進化がもたらした産物はたくさんある。イヌは約1万5千年前にオオカミから家畜化された。ロシア人科学者のドミトリ・ベリャーエフは40年でキツネの家畜化に成功した。トウモロコシは7000年前にテオシントという野草から進化した。

氷河期の終焉により海面が上昇。山が小さな島になった地域も出た。そういう地域では大きい捕食者の個体数を支えられなくなった。結果、身体が大きいことの利点はなくなった。ゾウは5000年間で身長4mから1mほどへと劇的に進化した。ゾウの一世代は約20年。当時のヒトとかなり近い。

現代のフィンランド人とズールー人を見間違える人はいないだろう。現生人類がアフリカを出て拡散してから、民族によって異なる進化の道を辿った。

北ヨーロッパ人と中央アフリカ人の対マラリア抵抗性について見ると、ナイジェリア出身の人には「鎌状赤血球変異」を持つ人がいるかも知れないが、北ヨーロッパ人でこの変異を持つ人はほとんどいない。ナイジェリア人の大部分はこの変異を持っていないが、それでもどんなスウェーデン人よりもマラリアに対する抵抗性は強い。彼らはこの変異以外の遺伝子のマラリア耐性版を持っているからだ。

自然選択における進化では、以上のように「ある集団」に相関した変化が起きる。同じ方向に向かい、同じ選択圧に対する反応として起きるのだ(都築注:つまり、地域レベル、閉鎖された集団レベルで進化するということか?)。

感想:以上、「第一章:概観」より。遺伝子解析をベースに、「ネアンデルタール人とは混血していたはず。異種との遺伝的交流により現代人にとって望ましい対立遺伝子(遺伝子の変異体)がプールされ、『大躍進』の基盤になった」「現代ユダヤ人がホワイトカラーの仕事でハバをきかせているのは、同族結婚を続けた結果、高い知能が有利になるような自然選択が働いたおかげ」と主張している。一歩間違えればトンデモ本だが、これらの主張の全てに科学的な根拠(遺伝子解析の結果)があるのが何とも……。ほんの少しコースをずらすだけで、フランシス・ゴルトンの「優生学」と融和しかねない危険があるが、通説を覆すという点でスリリングな本であることは確か。

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