2012年12月1日土曜日

<野球本メモ>「浩二の赤ヘル野球」、山本浩二:追記

以下、「ボクの球界エンマ帖(4章)」より。落合博満関係のハナシを中心に紹介。

・落合は、これまで自分が一番関心を持ってきたプレーヤー。何しろ共通点が多い。表面的には逆方向に大きいのが打てる。これはバットにボールを乗せる技術が確立しているからできることだ。アウトローにはちょこんと当てるバッターが多いが、我々は打球に全体重を乗せるくらいのつもりでしばきあげる。(昭和)六十年までで(現役で)できたのは自分と落合くらいだったが、翌年、清原が瞬く間に習得してしまった。

・次に似ている点は、バケツ打法と酷評された左足のステップ。普通なら投手方向に真っ直ぐ伸ばす左足を、我々は三塁側ベンチの方に引いてしまう。体が開き、体の“ため”がなくなり、手打ちになってしまう。非常に悪いフォームだ。それでも我々は打てている理由は、左足は引いても腰が開かないから。足が開いても腰が開かないのは天性ともいえて、余人にはお勧めできない。

・なぜこんな悪いフォームを採り入れたのか? 落合には訊いたことがないのでわからないが、自分の場合は以下2つの理由から採用した。

・一つは、左足を引いても腰が開かないので、左足を引くことでバットから遠ざかるアウトローの球を打てる実力があるため。いま一つは、シュートが苦手だったから。引退した今だから言えることだが、自分がバケツ打法に取り組んだのは、シュートが苦手だったことに尽きる。左足を引いておけば、インハイに切れ込んでくるシュートにも難なく対応できる。自分にとってバケツ打法とは、シュートを克服するためのスタイルといえる。

・落合もシュートは苦手のように見える。ロッテでカモられていた投手は、郭泰源(7-0)、渡辺久信(9-2)、田中幸、田中富(ともに13-3)、山田久志(18-5)。逆にカモにしていた投手は、山内和宏(16-13)を筆頭に、久保康生、工藤公康、今井雄太郎、松沼兄らで、いずれも4割以上の成績を残している。つまり、自分と同じようにスライダーで外に逃げていく投手には滅法強いが、シュートを武器にする投手には弱いのだ。

・これだけのアキレス腱がありながら三冠王を三回も獲得できたのは、技術が素晴らしいことも去ることながら、「自分が打てるコースに球を置く」ことが出来ていたからだろう。これはどういうことかというと、ストライクゾーンの一点絞りであり、狙い球を決めて待つことだ。

・現役最後の日本シリーズ、西武との第一戦で東尾から打ったホームランのケース。打った球はアウトローぎりぎりのスライダー。自分でもよく打ったと思うほど難しい球だ。しかし、アノ場面、自分ではあのコースこそがど真ん中の感覚で打っていた。

・つまり、あの時の東尾は必ずアウトローぎりぎりにスライダーを投げる、と確信し、その一点だけに気持ちを集中していたから。その証拠に、東尾は初球にど真ん中のスライダーを投げてきている。明らかな失投だったが、自分は手を出せなかった。もし打っていればどん詰まりの凡打だったろう。あの場面、アウトローをど真ん中と決めていた自分にとって、実際のど真ん中は内角ぎりぎりの際どい球になっていたからだ。

・つまり、落合も自分と同じように、打席ごとに自分なりのストライクゾーンを設定して打ちこなしてきたバッターなのだろう。だからこそ、リーグを変えて2年間、苦労してきたのだ。「自分が打てるコースに球を置く」のは、当てずっぽうに決めているわけではない。自分なりのデータの積み上げを基に決めているのだ。

――なお、落合は自著で「球を待ってはいても、配球を読むことはしない」「配球を読んで1/2くらいの確率で当てることはできても、投手は一定確率でコントロールをミスする」「アウトローと読んで踏み込み、インハイが来てアタマに当たったら、それでお終い」「だから待球は全部インハイのストレート。これであれば、アタマへの死球にいち早く対応できるし、変化球にもバットが振り遅れない」という趣旨のことを書いている。

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