2012年11月30日金曜日

<野球本メモ>「浩二の赤ヘル野球」、山本浩二

以下、「ボクの監督術(2章)」「選手はこうして使いたい(3章)」より。

・カープ入団以来、6人の監督に仕えたが、優秀な指揮官はアメとムチの使い分けが上手かった。その代表例が古場竹織。厳しい監督だったが、褒め方、おだて方が上手かった。

・チームの士気を見分ける方法。選手の目が皆グラウンドに向けられているチームは強い。隣の選手と私語を交わしたり、監督の顔色を窺っているチームは弱い。打球が左に飛ぶ瞬間、みんなの首が左を向くチームは絶好調であり、強い組織だ。V9巨人がそうだった。

・シーズンを乗り切るのに必要な要素に体力の“貯金”がある。プロ野球選手は、梅雨の季節で一度疲労のピークが来る。これにより下半身が不安定になる。ここで重要なことは、再度体を作り直すことで、要するに走りこみであり練習をするのである。こうして体力を“貯金”する。

・好投手の条件で第一に挙げられるのは「球離れが遅いこと」。投手の調子を見分ける方法について、コントロールを見る場合、第一ストライクより第二、第三が中へ入っていくときなら、KOは時間の問題。反対に外にいくときは安心して見ていられる。

・球のキレは、打席に入らないと本当のところはわからない。ただし、テレビでも見分けられる方法もなくはない。一つは、インハイのストレートを打者が見送るとき、打者の上体がやや浮き加減になるときは、キレがいい証拠。一流打者は表情や態度で「大したことはない」というポーズを取れるが、体の反応だけはごまかせないからだ。

・いま一つは、打球の方向。鋭いファウルがバックネットに突き刺さっているときは、十分にキレている。しかし、右打者が三塁線、左打者が一塁線に強い打球を打つようになったら要注意。球威は激減している。

・ペナントに望みがなくなった以上、チームは来季を睨んで戦う必要がある。これは、と思う新戦力を伸ばす戦い方をすべきだろう。選手にとって一番安心できる監督は、消化試合でもシーズン前半と同じ戦い方をする監督だ。しかし、自分の経験から言えば、終盤になって、より若手にチャンスを与える監督の下の方が、チームに活気があったといえる。

・スター選手のプライドは、一度傷つけてしまうと癒すのに相当な時間がかかるものだ。看板選手というものは、ファンの想像以上に丁寧に扱われている。待遇面では、遠征の部屋割り、乗り物の座席、カレンダーやポスターの順番が全て優先される。

・地方遠征では、一番良い部屋が監督で、次の部屋が自分と衣笠だった。ツインのシングルユースで、相部屋のコーチ、中堅以下とは格段の開きがあった。遠征の際には、移動手段を事前に訪ねてくれるし、お揃いのブレザーを作るときでさえ、「お前はどう思う?」と確認してくれる。まして給料はフロントや監督の数倍以上である。このようにチームの看板として大事にされている選手から、その看板を突然外したら……屈辱感、焦燥感、無力感から容易に立ち直れないものだろう。

「(昭和)五十四年の四月下旬だったと思う。現在大洋のマネジャーをしている雑賀マネがわざわざ喫茶店に呼び出して言いにくそうに口を開いた」
「『あのなあ、コウちゃん、気を悪くせんといてな』」
「何を言いだすのか、と思ったら、毎年五月一日に発表される所得番付のことを言いだした」
「『あんたよりライトルの方がちょびっと上に行くかもしれん。それを断っておこう、と思ってな』」(131~132頁)

・ケガはいざしらず、故障は不可抗力ではない。考え方、対応次第でどうとでもなる。ケガと故障は明らかに違う。ケガとは骨折、捻挫、腱断絶など突発的に起きる症例を指し、物理的に機能がマヒしている状態を指すと考える。一方故障は、発生時にはケガによるものが多かろうが、その後の時間的経過で、機能は完全といかなくても努力すれば動かせる状況を指すと考える。痛くて十分な活躍はできそうもないが、やってやれないことはない状態だ。

・ここで対応は二分される。故障で休むか休まないかだ。僕の場合、ケガは休まざるを得ないが、故障では断固出場すると考え、実行してきた。理由は単純で、最初の頃はレギュラーポジションの死守であり、ベテランになってからは中心打者としての矜持からだ。

・ただし、故障で休むことを「間違っている」とまで言うつもりはない。常に最高のコンディションで出場して、最高のパフォーマンスを見せるという考え方も、一つの見識と思うからだ。メジャーリーグはこのような考え方だろう。しかし、メジャーは支配下選手が180人。日本の3倍も厚い戦力を持ち、代わりの選手をいくらでもつぎ込める。だからこそ成立する考え方とも言えるのではないか。

――WBC日本代表監督就任記念です。ちょうどこの頃、星野仙一の“全盛期”――NHK解説者として全国レベルの人気を博した後、満を持して中日監督に就任。リーグ優勝に導いたことで、12球団で最も人気の高い監督となっていた――だったこともあってか、星野絡みのハナシが非常に多い。なお、帯には「“読みの達人”が明かす野球を見るポイント」とあるが、それほど大したことは書いていない。ただし、当時のプロ野球OBの野球本と比べれば、かなり良心的。

0 件のコメント:

コメントを投稿