近所の床屋でおでこにカミソリを当てているときに揺れ始める。床屋さんもさすがにプロで、揺れた瞬間にカミソリを外す。「まぁ、ここしばらく続いている東北の揺れでしょ」と顔に石鹸をつけたまま鷹揚に寝ていると、しゃれにならないくらいに揺れる揺れる。
「お客さん、これはまずいですよ。避難した方がいいですよ」と床屋さん。慌てて立ち上がり、顔を濡れタオルで拭ってもらっているうちに立っていられなくなる。とりあえず髪を濡らしたまま部屋の隅っこの大きな植木鉢を押さえながら、揺れがおさまるのを待つ。
揺れた時間は体感時間で3分くらい。「一度、外に出ましょう。ここじゃ危ないですから」と促され駅前の広場に。工事現場の兄ちゃんから買い物の主婦、女子高生、ホームレスまで一緒に広場に固まる。携帯を持っているお姉さんに「いまの地震、震度どれくらいでした?」と聞いてみるものの、「ケータイ繋がんないですよ」とのこと。みんな一斉に電話をかけているからなんだろうか?
しばらく待っていたらまた余震。これが結構でかい。頭上の電線がブンブン唸る。余震が収まったところで床屋に戻り、「ノドにカミソリ当ってるときに余震が来たらお陀仏ですから、髪だけ乾かしてください」といって帰路に着く。駅を覗いてみると全線ストップとのこと。駅構内は立ち入り禁止になっていた。
帰りに寄ったスーパーには、すっぱい匂いが充満している。店員に「買い物できますか?」と聞くと「大丈夫ですよ」という返事。すっぱい匂いの元は棚から落ちて割れた米酢らしい。店内放送では「当店は震度7まで耐えられる耐震構造です。ご安心ください」とアナウンスするテープがエンドレスで流れている。300坪以上の広い店内にいる客は、手前も含めて両手で数えられる人数くらい。とりあえず夕食の食材を調達して帰宅。
――というわけで、国内観測史上最大の地震があった“そのとき”に、自分が何をしていたのかについて、忘れないうちに書き留めておくことにする。家の中の惨状については思い出したくもないけど、こんなものは都内の帰宅困難者や東北各地の被災者の方に比べれば何でもないことだ。
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