2012年6月20日水曜日

『新解 函館戦争』に親しむ2つの方法:その1

兵頭二十八師の最新刊『新解 函館戦争』発売から1カ月。Googleマップを頼りに政府軍、徳川脱籍軍の行軍図を書き込みつつ、みっちり再読し終わったところで、ひとつ感想でも書こうかな……と思ったのですが、なかなか上手いことが思いつきません。というわけで、今日の今日まで沈黙(=魂のやる気待ち)を貫いてきたわけですが、待てど暮らせど上手いことが思いつかなかったので、とりあえず見切り発車で「最新刊に親しむ読み方」について書いてみようかと思います。

332頁に渡り小さな字で埋め尽くされている大労作(実は写真も凄くて、軍師自身が古戦場を撮影しまくっている)を味わう方法は、大きく分けて2つあると思います。

1つは、近年の「わかりやすい兵頭本」の一冊として読む方法です。軍師は、最新刊で伝えたい主張を「はじめに」と「おわりに」でコンパクトにまとめ、さらに「各章の冒頭」で、この主張を噛み砕いて解説しています。つまり、「はじめに」「おわりに」「各章の冒頭」さえ拾い読みすれば、少なくとも最新刊のエッセンスは95%くらい味わうことができるということ。

その主張は何かといえば、日本の国防を巡る問題であり、日本独特の帝国主義の問題であり、国家における陸海軍の意義についての問題であり……etcといったものです。この辺の内容は、既刊(『日本の戦争Q&A』など)におけるそれぞれの主張の最新バージョンであり、誰が読んでも蒙を啓かされること間違いなしで、かつ面白いです。兵頭ファンであれば、このパートだけを目当てに本を買っても絶対に損はしないといえましょう。

実のところ、ファーストインプレッションとしては、「はじめに」「おわりに」「各章の冒頭」で書かれていた内容について、「もう仰るとおり。それ以上何も付け加えることはないです」でした。

例えば――

明治維新について、「政体転換によって失職することになった武士(=国家公務員)たちの、生計をかけた実力闘争」(15頁)

榎本の決起について、「じっさいにできあがったものは、手兵を率いてきた部隊長級幹部たちの互選の投票によって、榎本その人を<辺境伯>のようにかりそめに選定した貴族主権の封建支配体制です。中央政府の威令が衰えた乱世に僻陬に出現しがちな、山賊や海賊の首領のモダン版だったといえます」(150~151頁)

――と見事に看破。こんな感じの説得力ありまくりで切れ味鋭い兵頭節が連発されているわけですよ。

で、感想を書くとしたら、畢竟↑で紹介したような引用or読書メモを羅列するようなエントリになってしまうことは明らかだったので、今日まで何か書くことを躊躇っていたわけですよ。絶版本ならいいけど、最新刊の内容の勘所をそのまま載せるのはあずましくない(北海道弁)ですからね。

さて、最新刊のエッセンスを手軽に味わうには、「はじめに」「おわりに」「各章の冒頭」を拾い読みしておけば、まぁ間違いない――とは思いますが、最新刊の魅力はこれだけではありません。また、拾い読みでは、内容を100%味わうことも不可能です。

というわけで、手前が考えるもう一つの読み方は、「手軽に読める書籍のなかでは、日本一詳しい戊辰戦争期の戦記モノ」として読む方法です。



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