2010年4月30日金曜日

立浪和義、「負けん気」:その4

手前が考える星野のやり方(以下、星野スタイル)とは、以下のようなものだ。

・扱いづらい中堅、ベテランのポジションに若手を抜擢する。
・抜擢された若手は忠実な子飼いになり、押しのけられた中堅、ベテランは不満分子となる。
・自チームの不満分子は、他チームの不満分子とのトレードで放逐する。
・トレードで来た他チームの不満分子を積極的に起用して、忠実な子飼いにする。
・これを繰り返して子飼いを集め、統制しやすいチームを作る。

彦野利勝の抜擢に伴う平野謙の放逐(小野和幸とトレード)、中村武志の抜擢に伴う中尾孝義の放逐(西本聖のトレード)などは、星野スタイルの典型だろう。現在では原辰徳監督が、星野スタイルの正統的な後継者のように見える。

一方、立浪からレギュラーを剥奪した落合は、星野スタイルとは対照的なやり方だ(以下、落合スタイル)。

・全てのポジションで競争させる。レギュラー保証は3年以上規定打席に立ち続けた選手のみ。
・レギュラーは、結果が出なくても一年間使い続ける。それで結果が出なければ、翌春キャンプから競争させる。
・競争結果に将来性は勘案されない。現時点で一歩でも上の選手が起用される。
・トレードはあまり使わない。
・「子飼いはいないが、不満分子も出てきにくい」統制しやすいチームを作る。

05年に立浪、07年に山本昌を使い続けて優勝できなかったように、ベテランに配慮し過ぎて勝ちきれないことがあり、他チームよりも若手の台頭が目立たないのが、落合スタイルの特徴だ。

単純に「勝つチームを作る」のであれば、落合スタイルがベターだろう。11年で2回しか優勝できず、3回Bクラス落ちした星野と、6年間で優勝2回、日本一1回、Bクラス落ちゼロの落合とでは、比べるまでもない。しかし、「ファンに支持されるか否か」や「マスコミが取り上げやすいか否か」で見ると、――四半世紀来の落合ファンとしては認めたくないことだが――星野スタイルがベターだ。

星野がなぜファンやマスコミに受けるのか?

端的に言えば、ファンにとってもマスコミにとっても「わかりやすい“ストーリー”」を提供できるからではないか(“オムライス記者”も理由の一つかも知れないが、それだけではないだろう)。

「スター候補がレギュラーに!」(=中堅、ベテランを追いやり若手抜擢)
「大型トレードで新戦力加入!」(=不満分子を放逐し、新たな子飼い候補を抜擢)
「ヒーローインタビューで『監督のために』という浪花節炸裂!」(=抜擢された選手が「意気に感じて」監督を支持)

こうしたファンの琴線に触れ、マスコミが取り上げやすいネタは、落合スタイルでは絶対に望めないものだ。「勝ち」「負け」「技術ごと」だけで紙面を埋められない力不足のマスコミと、泣けて笑える“ストーリー”を求める世間一般の人々にとって、星野の提供する“ストーリー”は使いやすいものだ。つまり、紙面を埋めるに便利であり、感情を動かすのに便利であり、表面的な理解でも話題にするのに便利であるということ。

そんな星野スタイルの後継者として、早ければ再来年にも中日の監督に就任するであろう立浪は、落合が残したチームをどのように率いていくのか? 荒木雅博選手、森野将彦選手あたりがトレードで出され、まだ見ぬ新人がレギュラーの位置を確保し、シーズンごとに成績が乱高下する“立浪軍団”――のようになっているのかも知れない。

0 件のコメント:

コメントを投稿