兵頭二十八師の新刊『「日本国憲法」廃棄論:まがいものでない立憲君主制のために』(草思社)を読みました。
◆目次
●まえがき:立憲君主制こそが特権の暴走を防ぐ
●第1部:自由と国防が不可分なことを確認しよう
●第2部:「押し付け」のいきさつを確認しよう
・H・G・ウェルズとF・D・ローズヴェルト
・国内専用で通用する便利語になった「自存自衛」
・アメリカ側の戦後経営準備
・新憲法草案を巡る攻防
●第3部:「改正」ではなく「廃棄」からこそ国民史が再生する
●あとがき:「日本国憲法」が日本国民を危険にし不幸にする
発売前なのに読んだとは、これ如何にって? いやぁ、実は昨日、買い物帰りに郵便受けをみたら、ちょっと厚めの封筒が入っていて、「この形は出版社からのものじゃないし、このあいだAmazonに注文したのはトレイシー・ウルマンのベストアルバムだし、どこからのものだろう?」と思いつつ開けてみたら、軍師の新刊だったわけですよ。
というわけで、ポカポカ陽気ながらも黄砂のお陰でとてもお散歩する気にはなれない日曜午後という、読書に最適なコンディションの下、半日かけて通読しました。
途中、昼寝を挟みつつじっくり読み終えて、真っ先に思ったことは、「これを含む草思社の3冊を読めば、兵頭流軍学の真髄を学べるなぁ」ということ。これまでに兵頭本を一冊も読んだことのない人は――
・『日本人が知らない軍事学の常識』を読んで、日本を巡る軍事及び政治上の課題と隣国の脅威の本質と現代における軍事力の意味をひと通り学んだ後
・『北京は太平洋の覇権を握れるか 想定・絶東米中戦争』を読んで、現在日本が直面している戦争の危機の実相と米中日における軍事ポテンシャルの“相場”を知った後
・新刊『「日本国憲法」廃棄論:まがいものでない立憲君主制のために』を読んで、日本の安全保障にとって本当に必要なファクターと、将来に渡って「安全、安価、有利」に暮らしていくために日本国民が為すべきことを知る
――ことで、兵頭流軍学の真髄を95%以上マスターできます。このことは16年来兵頭ファンをやっている手前が保証します。加えて3冊とも内容、文章とも極めて平易でわかりやすく、中学生以上の国語能力があれば誰でも理解できますからね。今からでも遅くはありません、未読の人は、これを機に兵頭流軍学をマスターしましょう!
……といっても、この新刊のタイトルを目にした多くの人は、「この人、ちょっとイカれてるんじゃないの?」と思ったんじゃないでしょうか。
日本国憲法については、9条問題を筆頭に様々な言説が巷に溢れていますが、これらの言説を思いっきりまとめてしまうと、結局のところ「<護憲>か<改憲>」の問題に収斂されるといっていいでしょう。もう少し言えば、「左翼が<護憲>を主張し、右翼は<改憲>を主張する」といったところでしょうか。
しかし、兵頭師は<護憲>は当然のこと、<改憲>も大きな誤りであり、絶対に許してはいけない! と説きます。「<改憲>でもしょうがない」とか「<護憲>よりは<改憲>のがマシ」みたいなヌルい言い方じゃぁありません。西村知美よりも数段強い調子の「ダメ、ゼッタイ!」ですよ。右翼とか左翼とかを超えたラジカルな主張にして、非現実的に思える主張ですからね。世間一般の人からは、アタマのネジが外れているように見えても仕方がない――と、16年来のファンである手前でさえ思います。
でも、兵頭師の説く<廃憲>の主張は、決して大向こうのウケを狙った突飛な言説なんかじゃぁありません。読めば納得、知ればこれしかない! と言わざるを得ない論なんですよ。
「(前略)本書は、日本人が『立憲君主制』を取り戻すべきであることを、強く主張いたします。そのためには、当用のマック(マッカーサー)偽憲法を『改正』などしてはなりません。改正は、国民史にとって、とりかえしのつかない、自殺的な誤りです。偽憲法は、まず廃棄するのでなくてはなりません」(9頁)
「『改憲』は、『一九四六年に日本人は天皇を守れなかった』という歴史を意思的に固定する行為になってしまいます。それは将来の日本人の『国防の意志』に対して、ぬぐうことのできない汚損を刷り込むでしょう。日本人によって一度演じられたそのような全面敗北は、将来また、起こしてやれるはずだと、外国人にも期待をさせてしまうでしょう」
「そんなどす黒い期待は粉砕してやらねばなりません。国体変更を外国軍隊から強制されてそれを呑んだという経緯をじぶんたちで完成してしまってはいけないのです。その経緯を、最後に、つまり今、逆転しなくては。それが、日本の将来の安全を確かなものとし、ひいては日本人の自由を約束します」(10~11頁)
まえがきからの引用ですが、<廃憲>論のエッセンスは↑の短い文章に凝縮されています。手前はこれを読んで、中学生の頃から四半世紀に渡って大事にしてきた<改憲>論を、キレイさっぱり棄てました。
なぜ、<改憲>ではダメなのか?
なぜ、天皇を中心とした立憲君主制が必要なのか?
答えは全て本書にあります。が、新刊を読んで蒙を啓かされた兵頭流軍学の一門弟として、手前がどのように憲法問題を考えていたのか? そして如何にして転向したのか? について連々書くことにも少なからず意味はあるだろう……とも思うので、明日(もしくは明後日)以降は、新刊の内容を紹介しつつ、これまでblogで書くことを意図的に避けてきた憲法のハナシについて書いていこうと思います。
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