2012年10月30日火曜日

<野球本メモ>「勝ち続ける力」、森繁和

・体験的に、ちょっといいレベルの高卒選手を採っても、失敗する確率の方が大きい。高卒選手が、入団3年目くらいの時期にプロで活躍できたら、スカウトと指導者は評価されていいと思う。

・広岡と森には「本当の野球の勝ち方」を教えられた。コーチとしての基本は森から教わった。東尾は一緒に飲みに行く兄貴のような人。投手出身の監督、コーチという立場で意見が食い違うこともあったが、今となってはいい思い出。中日での8年間は、それまでに見て学んできたことの集大成。

・ドミニカ選手は呑み込みが早い。日本で高校生が3年かけて練習することを3~4カ月で習得する。潜在能力が飛び抜けている。しかし、与えた課題はすぐできても、忘れるのも早い。結局、1年かけて教えることになる。

・国や人種の違いで選手を見る考えはない。身体能力に優れているか、野球が好きでうまくなりたいと思っているか、そしてハングリー精神を持っているかという点で選手を見る。その意味では、すべてを兼ね備えた黒人選手を好ましく思う。

・褒めるコツは、その選手の一番褒めて欲しいところを具体的に褒めること。例えば、いつも100球でバテて打ち込まれる先発が、120球投げて完投した場合、「よく完投したな」と、100球の壁を超えたことを褒める。その時には、多少悪かったことには触れない。ヒットを打たれていても、四球を出したとしても、必死で抑えたなら褒めてやる。

・エースとは、「しんどいのはわかっているが、ここで投げてくれないか」と言われた時、「はい、わかりました」と答えてくれる存在。「ここでの1勝は、意味も価値も違う」とわかってくれるピッチャーのこと。ローテを守ることは先発投手の義務であって、これをクリアしているだけではエースとはいえない。

・エースに成長していくには、当人の性格以上に新人の頃からの育て方が大きく影響する。加えてチーム事情も大きく影響するだろう。「お前、エースをやれ」と指名されて、なれるものではな。周囲が自然と認めていくもの。チームの、首脳陣の、選手の目指す勝ち方に、決めるべきときにビシッと応えるピッチングができる投手が、自然とエースに育つ。

・勝利投手インタビューで「我慢して投げました」というコメントは好きではない。我慢して投げるのは当たり前のことだから。「野手のおかげで勝ちました」も好ましくない。負けた時も野手のせいか? ということになる。エースともなれば、マスコミへの話し方についても、きつく言うこともある。

・キャンプで一所懸命につくった体力は、もって2~3カ月。だから中日では、キャンプ後もオープン戦、公式戦をとおしてランニングの量がほとんど変わらないようにした。技術が上がっても走りこみや肩のつくりが足りないから、技術と落ちてきた体力のバランスが崩れ、夏になるとダウンしてしまう。最も早い選手で開幕1カ月もたないこともある。

・中日のキャンプでは、臨時でトレーナーの数を増やし、若い選手も優先的にマッサージを受けられるようにした。新人なら1週間に2回は身体チェックし、結果を全部コーチ陣に報告させる。ベテランとの差をつけず、みな同じ条件で身体を整えさせるようにした。

・昔と比べると、個人の基礎体力の差が激しくなってきているように感じる。以前は、たとえば体力10の選手が10人中7人はいて、2~3人が落ちていても、いずれ追いついて全員が同じ目標へ向かえた。今は飛び抜けている選手が2~3人いて、残りはレベルが低いように思う。

・以前のように、短期間で体をつくるのは無理。時間をかけなければ壊れてしまうという怖さがあり、キャンプの3カ月が実践的な練習に使えなくなってきている。昔は、キャンプの1~2週間で基礎練習ができた。今は違う。卒業式や試験でキャンプと学校をいったりきたりするので、故障のリスクがあるピッチングなどはさせられない。昔のように「卒業式などでなくていい」とは言えなくなっている。

・プロ野球のマウンドでの孤独感は、中学・高校のそれとはレベルが違う。差がありすぎるので、プロに入るまでは、経験してきたことにはならない。それまでは楽しい試合を続けてきて、本当に厳しい試合を味わっていないのだ。

・中日時代はマスコミに選手のことは一切話していない。記者の方で勝手に見て書くなら書けというスタンス。だから、どんなことを書かれても、私たち(落合博満と森)が一切話していないことを選手たちは知っていた。

――本当なら約束通り仁志敏久の新刊について書くべきなんでしょうが、魂のヤル気がなかなか充填されないもので……。というわけで森繁和の新刊の読書メモでお茶を濁します。大まかな内容は既刊と同じですが、ところどころ面白い指摘があったので、以上、気になったところを取り上げてみました。

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