2012年10月5日金曜日

私家版・兵頭二十八の読み方:その21

**「私家版・兵頭二十八の読み方」のエントリでは、日本で唯一の軍学者である兵頭二十八師の著作を、独断と偏見を持って紹介します**

*前回の続き

草思社から上梓した著作では、2冊続けて一般読者向けにシフトした内容という“共通”点があり、ここにきて<廃憲>を念入りに言及するという“ファクター”がある。

そこから導き出される答えとは?

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手前が思うにその答えは、「軍師はついに、三島由紀夫、江藤淳が成し遂げられなかった憲法改正(もちろん理想は<廃憲>)に向けて本腰を入れたのだなぁ」ですよ。

彼らが憲法改正(以下、改憲)を目指したことについて、その理由とか行動について書き始めると、多分、一冊の本になるでしょう。そんなことは、浅学非才な手前の手に余る仕事なので、ここでは「三島が楯の会以降の一連の政治活動で目指したのは改憲」、「江藤がGHQの検閲について書いた『閉ざされた言語空間』で目指したのは改憲」くらいに捉えておきます。もの凄く大雑把な捉え方なので、ズバリ的中はしていないものの大幅に外しているということはないはずです。

加えて、彼らが言論活動をしていた当時は、言論だけで十二分に改憲が目指せた時代でもあったと、軍師は指摘しています。以下、兵頭二十八ファンサイト半公式の放送形式(8/13付)からの引用です。

>(前略)60年安保以降、日本の若いインテリたちが、あくまで言論だけで勝負するか、それとも、言論プラス、肉体的・物理的暴力で勝負を仕掛けるかという、分かれ道があったと思うのです。

>U:江藤淳は言論だけで日本を変えられると考えてたのですね?

>H:晩年はともかく、お若いころはそうだったでしょう。大学生が今より桁違いに少なくて、その少数のインテリだけ覚醒させればいいという時代だったから。その「言論」には、マスメディアだけでなくて、国会議事堂もあったでしょうね。「変える」とは、何を変えるんだということになるでしょう。それは、「1946憲法」なんですよ。あくまで。江藤先生の人生を賭けたゲームで、ぜったいにこいつを倒すんだと、肚をくくって射弾を集中していたボスキャラは、「1946憲法」なのです。

正直、↑の記事を熟読してもらえば、「<廃憲>が必要な理由」「三島と江藤が改憲を目指した理由」について全て把握できるので、このエントリをだらだら読む必要はありません。

「だったらこんなエントリなんて書く必要ないじゃないか!」って? いや、手前にとってのblogは、書きながら自分の考えを確認したり固めたりするためにも存在しているものなので、これはこれでいいんですよ。だいたいコレでおまんまを食べているわけでもないので、何を書いたっていいわけだし。

ともあれ、デビュー当時から訴え続け、以降の著作で肉付けし、2006年に明確な形に仕上げた<廃憲>という主張について、これまでは数千人の兵頭ファンに向けて訴えられていたものでした。「いやそんなことはない。最初からあまねく大衆に知らしめるために書いていたに決まっておろうが!」との反論もあるでしょう。でも、意図はどうあれ実際のところは、事実上兵頭ファンにしか届いておらず、一般読者に届くようなわかりやすい内容でもなかったということです。

それが今年になって俄かに変わってきた。広く一般大衆に知らしめ、具体的な成果に繋げようという、<廃憲>を実現するための言論活動へと本格的にシフトチェンジし、実際にその方針転換の第一歩となる、「兵頭流軍学のエキスを一般読者に理解してもらう」というミッションが、草思社の既刊と新刊の売れ行きという形で、具体的な成果を出しつつあるわけです。となれば、次の一手は、「一般読者に向けた<廃憲>の啓蒙」ということになるのでしょう。

しかしこれは、相当難易度の高いミッションでもあります。70~80年代とは違い、いまの時代は高校卒業者の6割以上が大学へ進学し、少数のインテリだのエリートだのはほぼ存在しなくなっています。それこそ、我が心の師である適菜収先生が指摘している通り、国民の「B層」化が劇的に進んだ結果、「B層」を動かさなければ、どんな政治課題も解決できなくなっているということ。

「一握りの大学生を啓蒙すれば改憲できる可能性だって微レ存」であったからこそ、エリート相手の言論で勝負をかけた三島や江藤でさえ、結局は敗北してしまった。翻って軍師が目指すのは、改憲よりもさらにハードルの高い<廃憲>で、かつ、啓蒙する相手が、かつてのエリート――少なくとも岩波書店の古典を100冊以上は読破し、資本論も大体諳んじることのできるくらいの知識を持つ大学生――に比べれば、確実に知的レベルの低い「B層」ですからね。難易度Very Hard。三島、江藤のチャレンジが『スーパーマリオ』のノーミスクリアなら、軍師のチャレンジは『CoD2』の「400高地の戦い」をベテランでクリアするくらいの難しさですよ。

そんな難しいミッションに軍師はどのように取り組んでいくのか? そして<廃憲>という政治課題を前に、一有権者としてどのように行動すべきなのか?

とまぁ、いろいろと書きたいことは山積みなんですが、仕事の合間にゲーム断ち、2ch断ちをして長文エントリに取り掛かるのが面倒なのと、連休中の仕事と連休明けの仕事の準備に取り掛かる必要があったりするので、ちょっと中途半端な感じではありますが、「私家版・兵頭二十八の読み方」のエントリ更新は一旦終了します。

*あと、念のために書いておきますが、ここまでのハナシは全て手前の勝手な思い込みをもとに書いたものです。ただ、軍師の真意はどうあれ、外形的な事実から見ていくと、このようなハナシが本当であっても不思議ではない――とはいえると思います。

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