◆目次
・第1章:探求なしの時代、古い探求の時代、新しい探求の時代、そして第三の探求と呼ばれる「イエス研究」の時代
・第2章:イエス研究と信頼に値する情報を得る方法
・第3章:諸資料、特にヨセフスについて
・第4章:イエスのユダヤ教
・第5章:イエスの誕生と青年期
・第6章:イエス、洗礼者ヨハネ、そしてイエスの公生涯の初期
・第7章:イエスと考古学
・第8章:イエスによる神の支配(神の王国)の宣教と彼の譬え話
・第9章:イエスの十字架と復活
・第10章:結論
以下、第9章より。
・復活に反対する7つの理由
①ニュートン的物理学を前提すれば、それは不可能である
②イエスはすでに彼を信じていた者たちにのみ現れた
③その望みが復活思想の源となった
④イエスの弟子たちが彼の遺体を盗んだので、イエスの墓は空であった
⑤復活信仰はキリスト教から始まった
⑥原理主義的なキリスト者だけがなおイエスの復活を信じている
⑦イエスは死んだのであって、死者の中から復活してはいない
・復活を支持する6つの理由
①’一つの開かれた宇宙において復活は可能である
②’イエスは彼をすでに信じていた者たちだけに現れたのではない
③’望みも希望もない。イエスが息を引き取った金曜日にパレスチナ・イエス運動は死滅
④’空の墓が復活信仰の源ではなかった
⑤’イエス以前の数世紀にわたってユダヤ人たちはすでに復活信仰を展開していた
⑥’何かがパレスチナ・イエス運動を生き返らせた
・⑥’について。歴史家たちは、イエス運動は失敗に終わったと理解している。会計係(ユダ)が裏切り、グループの指導者(ペトロ)が三度もイエスを否認した。イエスの墓が空になっていたとき、弟子たちはイエス運動を見捨てていた。
「何がイエス運動を生き返らせたのか? イエスの弟子たちは一致している。すなわち、彼らは、思いがけない仕方で復活したイエスを目撃した」(326~327頁)
・イエスの復活は、多様な資料によって証言されている。すなわちパウロ、マタイ福音書およびマタイの特殊資料、ルカ福音書およびルカの特殊資料、ヨハネ福音書、使徒行伝、マルコ福音書に暗示されている個所である。これらの資料は、明らかに互いに独立しているもの。なお、ある復活顕現はエルサレムで起こるが、他の顕現はガラリヤに位置づけられている。
・最初期の復活記事の起源は、第二神殿時代ユダヤ教では信頼に値する証人とは見なされなかった女性(の弟子)たちに由来するようだ。彼女たちが、信じようとしない男性(の弟子たち)に報告した。イエスが復活したと主張することは、2つの理由から「つまづき」を与えるものだった。第一に、イエスが奴隷あるいは犯罪人として死んだことを否定し得なかったこと。第二に、誰かが復活したと言明することで、語り手が嘲りの対象になり得ること。以上の「つまづき」があってもなお、復活の記事はリアルタイムで報告された。
・復活信仰は、紀元30年以前の数世紀間にわたる第二神殿時代ユダヤ教において、ハッキリと現れている。しかし、イエスの復活への信仰の基礎は、(復活に出会って)驚いた目撃証人たちである。
「問27 イエスは死者の中から復活したのか?」
「歴史家たちは、この神学的問いに答えることができない。歴史家にできることは、イエスが再び生きているのを見たがゆえに、彼が復活した、と主張する最初の弟子たちの証言を指し示すだけである」(331頁)
「しかしながら、歴史家は、イエスの十字架後まもなく、イエスの復活を経験した、とあるユダヤ人たちが主張した事実について述べることはできる。新約聖書神学の学者たちはさらに、新約聖書がイエスの復活を一貫して証言している事実を付け加えるであろう」(338~339頁)
――イエスについて、最新の成果を基に実に慎重、かつ実証的に研究した本。まえがきに「本書は、ナザレ出身で、紀元一世紀のある時期にエルサレムの西壁の外で死んだイエスの生涯と思想へのガイドブックの決定版である」(3頁)とあるが、手軽なガイドブックを期待して読み始めたら、よくも悪くも期待を裏切られる。タイトルに相反して中身は物凄く硬派。わかりやすさは皆無だが、面白さは格別。
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