一足早い感じですが、「下半期に読んだ本&今年読んだ本ベスト5」を上げてみたいと思います。「今年発売」じゃなくて「今年読んだ」というところに注意してください。いろいろあって新刊、既刊問わずあまり読めなかったことが残念ですが、ともあれ発表。
第五位:なぜ経済予測は間違えるのか?---科学で問い直す経済学(河出書房新社)
◆読書メーターの感想:非常に示唆に富む本。結論だけ聞けば社会主義者の繰言でしかないが、問題提起の仕方とテーマの切り口をことごとく自分の専門分野に引き寄せて論理を展開する手法が面白かった。「現代主流経済学は物理学の最新理論を借用して学問に見せかけた宗教」と受け取ったが、その代わりとなる“信念体系”はまだ見つかっていないのだろう。
*大元の主張は手前と正反対だったりするのですが、それでも得るところが大きかったです。“アカ”の多くは、「読者の志向を無視して自分のいいたいことを勝手に主張する」ものですが、この本はそれと正反対なので、誰が読んでも何らかの形で啓発されると思います。
第四位:大学キャリアセンターのぶっちゃけ話 知的現場主義の就職活動(ソフトバンク新書)
◆読書メーターの感想:非常に面白くためになった。10年前どころか5年前とも全く事情が変わっている昨今の就活の現状を、企業とも学生とも違う第三者的立場から明け透けに語った内容は、興味深いことばかり。この業界のインサイダーとして少々事情を知り得る立場にあるが、書かれていることのほとんどは真実であり妥当なものと感じた。10年代前半における日本社会の一部を上手に切り取ったルポとしても読める。良書。
*上記感想以上に付け加えることはありません。10年代の就活関係について知りたい人にとっては、基礎文献の一つといっていいと思います。
第三位:東ゴート興亡史―東西ローマのはざまにて(中公文庫BIBLIO)
◆読書メーターの感想:手放しで「面白い!」と断言できる歴史読み物。『ローマ帝国衰亡史』における中盤のハイライトであるテオドリック大王の伝記を軸に、東ゴート族の興亡を素晴らしく読みやすい文章でまとめている。お手軽な歴史読み物としても、『ローマ帝国衰亡史』のガイド役としても極上の一品。
*『ヴァンダル興亡史』『カルタゴ興亡史』の3部作の合わせ技で。ドイツ戦記モノの翻訳本にはお世話になっていたものの著作はスルー。で、この9月、たまたま図書館で見かけて手にとってみたらこれが大当たりだった。Amazonやネット予約だけで生活していたら絶対に読まなかったと思われるだけに、その辺の“お得感”もプラスしての評価。とはいえ、塩野七生の歴史モノよりは遥かに面白いので、この時代に興味のない人にもオススメします。
第二位:科学の大発見はなぜ生まれたか(ブルーバックス)
◆読書メーターの感想:名著。これまでに数え切れないほどのブルーバックスを読んできたけど、この本は間違いなく「歴代ブルーバックス・ベスト3」に入る。というか、初心者向けの科学史解説本として、これ以上に内容が深く、かつわかりやすい本を読んだことはなかった。古代ギリシア以降の科学の発展を「定説の批判と修正の連続」という視点から体系的な物語にまとめ上げ、さらにサルにでもわかる言葉で著した著者の“ウデ”が凄い。伊達にカール・ポパーの弟子はしていないということか。
*上記感想以上に付け加えることといえば、聞き役の息子(8歳)の質問内容がハイレベルだったことくらいか。とにかく凄い本。
第一位:ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体(講談社プラスアルファ新書)
◆読書メーターの感想:今年読んだ本ではベスト3級。誰もが漠然と考えている「どう考えてもいまの世の中っておかしいのでは?」という疑問に対して、「B層」(=マスコミに流されやすい比較的IQの低い人たち)という補助線をつけて、これ以上ないくらいにわかりやすく分析。そのうえで、「腐った世の中を正す方法」について、著者なりの回答をしっかりと導き出しているところが素晴らしい。
感想はblogにある通り。実際、手前の中の番付は殿堂入りの『新訳 戦争論』、上半期ベストの『トルコのもう一つの顔』に並ぶベスト3だった。
年間ベストワンは『トルコのもう一つの顔』(中公新書)。これは生涯ベスト10級だから仕方ありません。これを除くとダントツで『ゲーテの警告』です。なお、『新訳 戦争論』は、内容、面白さともこの2冊を上回っていると断言します。
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