2011年12月18日日曜日

『脳内ニーチェ』は面白おかしく読みました

朝野に改めて“B層”というキーワードを浸透させた名著『ゲーテの警告』を上梓してプチブレイク(=来年以降、本格的にブレイクすること必至)した我が心の師・適菜収先生の最新刊『脳内ニーチェ』(朝日新聞出版)を読みました。ニーチェの初心者向け解説本にして娯楽小説だった『いたこニーチェ』の続編といえば続編ですが、前作との繋がりは『スウォーズマン・剣士列伝』(主題歌以外はどうでもいいほど内容の薄い駄作)と『スウォーズマン2・女神伝説の章』(原作をほとんど無視した荒唐無稽のストーリーをベースに、三隅研次を露骨にリスペクトした血みどろ剣戟が繰り広げられる傑作)くらいに緩いので、正直、前作を読んでいなくても全然問題はありません。

ニーチェ解説本としてどうのとか、近代イデオロギー批判についてこうのとかいうことについては、後日、気力と体力があるときに改めて。ここではちゃんと笑える娯楽小説としての感想を少しばかり書いてみます。

大まかなプロットは、前作と同じで「現在婚活中(見込みなし)」の平凡なサラリーマンである主人公が、いろいろあってニーチェと対話して、日本がおかしくなった理由について教えを請うというもの。

で、この数行の突飛なプロットを、あの手この手で広げ、細工を加え、デコレーションすることで、ちゃんと笑える娯楽小説に仕立て上げているわけですよ。

冒頭の東日本大震災のシーンから回想を挟み、前作の主人公と邂逅(41頁~)してからは、創価学会の勧誘マンガみたいな超展開!

参考:変われるよ。現に俺は変われた。創価学会に入って俺は変われたんだ

そこから一気にトンデモ本的展開にいくかと思いきや、絶妙のタイミングでゆるめの日常風景(食事の内容と主人公の怒りポイントの描写だけが妙に細かめ)が入ってクールダウンしつつ、所々に冗談とも本気ともつかない笑える描写が挟み込まれる――という具合。笑いのテンションとしては、適菜先生のblogの「対談『バンド入門』」で書かれている感じです。細々指摘するのは野暮なので敢えて紹介はしませんが、手前は66頁の会話で思わず声を出して笑ってしまいました。

ともあれ、気軽に読める娯楽小説にして、奥深い近代批判の書であり、現代日本で最も信頼できるニーチェ解説本だったりするので、ニーチェのことを知ってる人も知らない人も、そもそもニーチェに興味のない人にも、「面白おかしく読める読み物の一冊」としてオススメします。



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