『放射線のひみつ』(中川恵一著、朝日出版社)
◆第一章:言葉と単位、これだけは!
1.放射線を語るための「言葉」から始めましょう
2.「被ばく(被曝)」は「被爆」ではありません
3.「放射能がやって来る!」はまちがいです
4.放射線・放射能・放射性物質――ロウソクの話
5.「シーベルト」は放射線が人間の体に与える影響を示す単位
6.「ミリ」「マイクロ」は「千分の1」「百万分の1」を表します
7.「シーベルト/シーベルト毎時」は「距離/速度」の関係
8.放射線の単位の使い分け――ベクレルとグレイ
9.放射線が変われば、人体への影響に違いが出てきます
10.100~150ミリシーベルト(積算)がリスク判断の基準です
◆第二章:放射線を「正しく怖がる」
11.放射線は身の回りにあります
12.放射線は、ありなし(黒白)ではなく、強さと量が問題です
13.放射線をあびる「範囲」も大事です――局所被ばくと全身被ばく
14.放射線の影響は、「花粉」をイメージするとわかりやすい
15.「花粉」と同じで、放射線の量と飛ぶ方向が大事
16.放射線の防護対策は「花粉症対策」に似ています
17.38億年間、生物は放射線の中で生きてきました
18.放射線により遺伝子がキズを受ける――確率的影響
19.放射線のダメージで細胞が死ぬ――確定的影響
20.発がんの仕組みについて――細胞のコピーミス
◆第三章:ニュースから読み取るポイント
21.「いつ・どこで・どんなものが・どの期間」に注目する
22.「100ミリシーベルトで0.5%」のとらえ方――その1
23.「100ミリシーベルトで0.5%」のとらえ方――その2
24.私たちの生活はリスクに満ちている
25.発がんリスクの代表例――甲状腺がんの基礎知識
26.チェルノブイリ、スリーマイル島で起きた健康被害
27.がんの放射線治療にみる放射線の影響
28.飲み物、食べ物、そして“土壌”の影響――外部被ばく+内部被ばく
29.妊婦と乳幼児への影響、それ以外の成人への影響
30.安全性の考え方――基準値は何のため?
◆大切ですが、少しむずかしい解説 放射線防護の考え方
――「こういう本を出したので宣伝してくれ」と頼まれたので、宣伝します。
で、この本ですが良くできていると思いますよ。素人向けの放射線解説本としては、わかりやすさという点でトップレベルにあることは間違いありません。特筆すべきは喩えの上手さ。
例えば――
「ロウソクが『放射性物質』で、火がついている状態が『放射能あり』の状態です。そこから出てくる明かり(光)が『放射線』」(23頁)
「ロウソク(放射性物質)の長さが半分になるまでにかかる時間を、『半減期』と呼びます」(24頁)
「半減期の短いロウソクは『太く短く』燃えます。この場合、放射線は短期間で一気に出るため長続きしません」(26頁)
――といった説明は、著者の“芸”の精髄といえるでしょう。
もちろん内容も(現時点における科学水準から見て)正しい内容で、科学的にケチをつけられるところはないように思います。ただ、素人(=おんなこども)向けを意識しているためか、典拠は一切ありません。なので、もう少し詳しく知りたい人には講談社ブルーバックスの『人は放射線になぜ弱いか』の方をオススメします。
著者はネット界隈では“東電御用学者”として何かと評判が悪いようですが――素人向けにわかりやすく解説し続けると、どうしても典拠を述べずに結論だけガンガンしゃべってしまい、結果、「どういう根拠があって安全なんて断言するんだ!」と思われてしまうのでしょう――、そういった先入観だけで「安全厨の書いた本なんて読む必要ナシ!」と片付けられるのであれば、これはもったいないことですよ。
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