2012年3月20日火曜日

私家版・兵頭二十八の読み方:その16

**「私家版・兵頭二十八の読み方」のエントリでは、日本で唯一の軍学者である兵頭二十八師の著作を、独断と偏見を持って紹介します**

軍学者として20年近くのキャリアを持つ兵頭二十八師が上梓した数多の著作を前にして、「これ1冊読んでおけば大丈夫!」――と、手前が勝手に決めつけてしまった新刊『日本人が知らない軍事学の常識』(草思社)。「なんでザザッとナナメ読みしただけなのに、そんなことが言えるわけ?」とのツッコミが入りそうですが、そう思った方は、まぁ目次を見てください。

◆目次
・はじめに:常識が共有されれば、“脊髄反射”で大津波にも対処できる
・第1章:なぜ、いまの日本では軍事学など勉強する価値がないのか
・第2章:アメリカ政府と米軍は、いま、何をしたがっているのか
・第3章:日本の戦力は、いったい、ナンボのものなのか
・第4章:北朝鮮と韓国、日本の「敵」はどっちなんだ?
・第5章:シナの、何がいちばんの脅威なのか
・第6章:ロシアが「ハードランディング」続行中の理由
・第7章:核攻撃と原発攻撃から国民をいかに防御できるか
・第8章:靖国神社と「偽憲法」に正しく向き合う
・おわりに:人を不幸にする閉塞感を掃除するために

このように、いまの日本を巡る状況について、「もし目の前に軍師がいたら聞いてみたいこと」を羅列したような章立てとなっています。しかも、それぞれの章の内容が、これまでの軍師のキャリアを総括するようなものになっているわけです。早いハナシ、軍師にとっての“大甲子園”(この喩えがわかりにくい人には“スーパーロボット大戦”とか“魔界転生”って言った方がいいのかナ?)みたいな本ってことですよ。

各章のあらましについて見ると――

●第1章:いまの日本の巡る政治状況と「反近代」の罠についてのハナシ
●第2章:アメリカの政治状況と4軍の概況。そこから導き出される対シナ、対日本戦略についてのハナシ
●第3章:明治以来の国防上の課題と地政学的状況。自衛隊の真の目的とその実力、解決すべき課題についてのハナシ
●第4章:朝鮮半島の軍事力と日本に対する攻め手。本当の脅威についてのハナシ
●第5章:人民解放軍の本質とハリボテでしかない軍事力。そしてシナの持つ本当の脅威であるソフトパワーの本質についてのハナシ
●第6章:ロシアを巡る政治・軍事状況と北方領土返還交渉の本質論についてのハナシ
●第7章:MDに過大な期待をかけられない理由と3.11以後の対テロ戦略。防災都市の必要性についてのハナシ
●第8章:現代日本が抱える根源的な問題である「日本国憲法」の欺瞞と靖国神社問題の本質。「反近代」の罠に囚われることの危険性についてのハナシ

――という感じです。で、それぞれの章の内容が――

・第1章は『予言 日支宗教戦争』。
・第2章は『極東日本のサバイバル武略』以下、時事ネタを軸に執筆してきた著作。
・第3章は『日本の戦争Q&A』『近代未満の軍人たち』。
・第4章は『逆説・北朝鮮に学ぼう!』。
・第5章は『2011日中開戦』『予言 日支宗教戦争』『極東日本のサバイバル武略』
・第6章は『グリーンミリテクが日本を生き返らせる』『極東日本のサバイバル武略』。
・第7章は『ニッポン核武装再論』とここ1年のMIL短blog記事
・第8章は『日本有事』『東京裁判の謎を解く』『予言 日支宗教戦争』

――と、これまでの軍師の著作から重要なエッセンスを抽出、2012年向けに精製した感じになっているわけですよ。

実のところ軍師は、「これまでに書いたことを繰り返し書くのは紙資源のムダ」と主張していて、これまでの著作は「既存著作と内容が被らないネタ」か「既存著作の主張を大幅にアップデートするネタ」をベースに上梓してきたわけです。ですが、今回の新刊では(2012年向けにアップデートされているとはいえ)「既存著作と内容が被らないようにする」という信条を、あえて封印しているように見えます。

これが明確な意図によるものなのか否かはわかりません。ただ、15年来の兵頭二十八ファンとして思うことは、「20年近くのキャリアを振り返る良いタイミングで出た一冊ではないか?」ということです。

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