●ブラックアウト(コニー・ウィリス著。早川書房)
感想は「すれちがいすれちがいすれちがいすれちがいすれちがい。以上」 このすれちがいの連鎖とままならなさこそが、コニー・ウィリスらしいといえばらしいんだけど、全著作を愛読し、その作風を十二分に承知している熱烈なファンの手前にして、「それにしたってすれちがい過ぎだろ!」と思わせるほどなので、ファンでも何でもない人にとっては、始終イライラさせられるかも知れない。
ただ、ロンドン空襲下の日常描写は圧倒的で、文字通り“見てきたか”のような素晴らしい筆致。一昨日、続編の『オールクリア』が出たそうなので、これから読む際は、週末に予定を入れず「土曜日はブラックアウト、日曜日はオールクリア」と、ゆっくり時間をかけて読むのがオススメ。最後に一つ。狂言回しであるということは百も承知だけど、こう言わざるを得ない。「ダンワージー先生、無能過ぎィ」と。
*追記:どうやら傑作中の傑作『ドゥームズデイ・ブック』が、こっ恥ずかしい表紙からポップなモノに変わったようなので、これまで表紙で読むのをためらっていた人は、是非、読んでみよう。なお、ダンワージー先生はハリウッド映画の主人公並に格好良く書かれているけど、やっぱり無能。
●居酒屋の世界史(下田淳著。講談社現代新書)
タイトルに惹かれ、まえがきを立ち読みしたうえで「面白そうだ」とあたりをつけ、図書館で借りたけど……一番面白かったのはまえがきかなぁ。なんというか、想像以上に浅くて「これならウィキペディア巡りをした方が良かったかも」と。リーダビリティは悪くないので、古代~現代における酒と日常についての読み物をあまり読んだことのない人であれば、面白く読めると思う。
●菊と刀(ルース・ベネディクト著。光文社古典新訳文庫)
一部の人からの評判が随分と悪いレーベルである古典新訳文庫版。翻訳者は角田安正氏。ただ、この本に限っていえば素晴らしい翻訳と思う。副題を『日本文化の型』ではなくて『日本の文化に見られる行動パターン』としていることから明らかであるように、パターナリズムの本ではなく、一報告書を基にした文化論として捉え直している。20年以上前に読んだきり(出版社は忘れたけど、長谷川松治氏の翻訳であることは確か)だったけど、それからそれなにり本を読み、人生経験を重ねたうえで再読してみると、いろいろと新しい発見があったり、知らないうちに影響を受けていたこと――例えば手前の持つ「日本には世間はあっても法治はない」という信念など――を思い知ったりして、随分、愉快な読書体験となった。
追記:「さぁ~て、今晩は『ブラックアウト』の続きにして完結編であるところの『オールクリア』で夜更かしだい!」と、喜び勇んで三省堂書店で2000円もの大枚を叩いて購入するも、タイトルには何故か『オール・クリア1』と“1”の数字が入っていて、裏返して帯を見たら、「新☆ハヤカワ・SF・シリーズ第10回配本(2013年6月発売)『オール・クリア2』」とあって/(^o^)\ナンテコッタイ。
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