●目次
・第1打席:スイングと構え
・第2打席:スイングの軌道と打球の行方
・第3打席:バットは大事な商売道具です
・第4打席:バッティングとココロ
・第5打席:チームと打線
・第6打席:バッターとピッチャーのかけひき
――以下、監督としての戦略・戦術思想の淵源にあたるであろう、第5章の内容を中心に、読書メモ風に抜粋。
「第5打席 チームと打線」より
◆四番バッターの資格とは
・四番バッターとはチームの顔。攻撃面のすべての責任をとるくらいの意識が求められる。ただ、そういうバッターを四番に置くのが適切なのかどうか、その考え方は国によって違う。
・アメリカでは「三番打者最強説」という考え方がある。一番良い打者に、初回から確実に打順が回ってくるからだ。マーク・マグワイア、バリー・ボンズ、ケン・グリフィーJrがそうだった。
・ランナーを置いた状態で、多く打順が回る確率が高いので、力のあるバッターを二番に置いた方がいいという考え方もある。攻撃の流れと、四番目に最強打者を置くことは別問題かも知れない。
・打順の組み方には、まだまだいろいろな考え方がある。例えば松井秀喜選手を一番に置いたら、チームの得点能力はどう変わるだろうか? 単純に考えれば、最もホームランを期待できるバッターに、一番多く打順を回せることになる。一番イヤなバッターから初回の攻撃が始まることが、相手にとってプレッシャーになるかも知れない。
・日本の四番バッターのイメージは、プレッシャーのかかる場面や責任を問われるような場面で、確実に一番良い結果を残してくれる人。チームの勝敗を左右する存在だ。技術のみならず、野球に取り組む姿勢、人間的にも信頼されている必要がある。攻撃の中核として全試合出場できるだけの身体の強さ、ケガへの耐性、調子の波の少なさも求められよう。
◆理想の打順の組み方は
・一般的には出塁率の高い足の速いバッターを一番に置き、小技のできるバッターを二番におき、強打のクリーンアップ……という組み方が理想とされている。ただ、この通りに攻撃が始まるケースは初回を除くとどれくらいあるのだろうか? 試合の流れによっては大きな意味を持たなくなるのではないか?
・野球は九回あり、九回の攻撃機会で相手より多くの点数を取ればよい。だから、九回の攻撃機会を活かすことを考えていかなければならない。攻撃を九面体と考えるのだ。と、考えれば、松井秀喜選手を一番に置くという打線の組み方も、一つの考え方といえる。
・打線の組み方の鉄則は、九面体の中に「死に目」を作らないということ。例えばセリーグでは、九番にピッチャーが入ることが多い。その際、八番に打てないバッターを入れると、八、九番で打てなくなる。
・野球で三アウトを取るのは大変なこと。しかし、二人打てないバッターが並んでしまうと、三アウトを取りやすいイニングができてしまう。これが「死に目」。こうなると九面体で勝負するはずが、七面体、六面体で勝負することになってしまう。打てないバッターはできるだけ並ばないように、離して組むということを考えなければならない。
◆二番バッターの仕事
・野球の攻撃は、二十七個のアウトを取られるまでに、どれだけ点を取るかがポイント。一つのアウトをどのようにして相手にあげるかは、ものすごく大事なことだ。これだけ点が入りやすくなっている現代野球では、バントで簡単に一アウトをあげてしまうということがマイナスになってくる。
・初回、一番バッターが出塁したとき、多くのピッチャーは焦っている。その日の一つ目のアウトをとるまで、なかなか落ち着かないものだ。このように動揺しているときに、簡単に送りバントでワンアウトを上げてしまうと、ピッチャーに一呼吸つかせてしまって、立ち直るきっかけを与えてしまう。
・バントは手堅い作戦と思われているが、実はそうでもない。バントで送った後の打者がイチロー選手のように確実にヒットの見込めるバッターであれば、バントも良い作戦といえる。しかし、次のバッターの打率があまり高くないときは無駄に終わる。
・東京学芸大野球部監督の及川研先生によると、大学トップレベルの試合でも、「バントで送って攻めた場合、無死一塁また無死一、二塁の場面では得点できない可能性が高い」という。現在、及川先生とセ・パ十二球団のデータを集計・整理しているところだ(都築注~現時点で栗山名義の著書では発表されていない。ただし、TV、雑誌などで発表されたか否かは確認していない)。
・それでもバントが多用されるのは、ベンチが言い訳を作りやすいからではないか? 「状況は作りました。あと打てないのは選手のせいです」という。「あそこで何でバントをしないんだ」と批判されることはあっても、「何であそこでバントするんだ」と批判されることはあまりない。こういう日本野球の風潮は変えていかなければならない。
◆「打線のつながり」とは何か
・どういう形で自分が攻撃をしていけば相手が嫌がるのか、味方にプラスになるのかを意識すること。ピッチャーに対する攻め方と、チームの中でいまの自分が置かれている立場を意識して、自分がいま何をしなければいけないのかということを考えてプレーするのが、いわゆる「つなぐ」ということ。
・例えば前のバッターが簡単にヒットを打った場合。「初球から打ちたいけど、向こうも慎重になっているから、ここはボールを見ていこう」と考えてもいいし、「裏をかいて、初球は甘い球から入るから、あえて勝負にいって打ちに行こう」と考えてもいい。どちらが良い、悪いとはいえないが、ただ漠然と打席に入るよりも、狙い・目的は明確になるので、確率も良くなるはずだ。
――他の章も、ここまで紹介した内容の通り、「当たり障りのない内容を両論併記で書いた」というもの。つまるところ、野球のセオリーに関する一般論を幅広く紹介しているだけで、事実上、何も言っていないに等しい。
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