●日本海軍はなぜ過ったか――海軍反省会四〇〇時間の証言より(澤地久枝、半藤一利、戸高一成著。岩波書店)
「組織ガー」「参謀ガー」と、『失敗の本質』以来、四半世紀に渡って語り尽くされているハナシを繰り返している。見識の深い半藤氏も、このメンツに合わせて話しているので、いつものような鋭さは感じられず。
●古代オリエントの宗教(青木健著。講談社現代新書)
世界の2/3が信仰している一神教の聖典『旧約聖書』『新約聖書』(イスラーム教はこの2冊と『コーラン』を採り入れた一神教)が紡ぐ「聖書ストーリー」が、地中海世界からオリエントへと侵食するなかで、オリエント世界に花開いた宗教(ゾロアスター教、マニ教、ミトラ信仰etc)がどのように抵抗し、受容し、変化していったのかを、やや駆け足気味に綴った本。著者の既著3冊を読んだ人にとっては、手軽に復習できるガイドブック的に読める。
インド、支那、日本に一神教が根付かなかったのは、「聖書ストーリー」の完成形であるスンナ派イスラームが成立した13世紀頃にモンゴルが西進した結果、オリエントより遠方への侵食が妨げられたためなのか? それとも「米」という、異様に人口扶養力の高い穀物を食べてきたインド、支那、日本には、「麦」の文化圏で育まれた厳しい宗教が決定的に合わなかったためなのか? と、いろいろと妄想したくなった。
●時の娘(ジョセフィン・テイ著。ハヤカワ・ミステリ文庫)
名作名作アンド名作。イギリスでリチャード3世の遺骨が発見されたというニュースを聞いて、本棚の奥から取り出して再読。やっぱりベラボーに面白い。この本がなければ、うんざりするほど氾濫する「本能寺黒幕説」とか、『逆説の日本史』なんかは一切合切存在しなかったはず。いわゆる“エンターテインメント系歴史ミステリ”のオリジンだけど、刊行されて60年以上経っているにも関わらず、この本と肩を並べるどころか足元に並ぶフォロワーすら存在しない。
追記:Huluで視聴中の『Buffy the Vampire Slayer』について。シーズン2、スパイクが出てきてようやく見るに耐えるモノになったという感じ。シーズン3になってから、俄然、面白くなってきた。イライザ・ダシュク――サラ・ミシェル・ゲラーといいジュリー・ベンツといい、ジョス・ウィードンの女の好みにブレは一切ないなぁ……――が出てきたことも嬉しい驚きだったりする。国内版DVDはシーズン2までしか出てないようなので、現時点でフルシーズンを日本語環境で見られるのはHuluだけってことになるのか?
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