2013年12月6日金曜日

私家版・兵頭二十八の読み方:その25

**「私家版・兵頭二十八の読み方」のエントリでは、日本で唯一の軍学者である兵頭二十八師の著作を、独断と偏見を持って紹介します**

高齢化問題に抜本的な解決法はない。このことは財務官僚以下の官吏にも自明のこと――というハナシについて、軍師は以下のように書いています。

「今日の財務官僚は、国家予算の三割を占めて、けっして今後も減ることはないであろう老人社会保障費について悩むうちに頭がおかしくなりました。戦前の陸軍省主導の『国家総動員』が日本の一人あたりGNPを逆に萎縮させていますように、財務省の考えつく唯一の『解』であるらしい消費増税も日本のGDPを停滞させるでしょう」(277頁)

正直、少々キツい表現と思いますが、手前はだいたい正しいと思います。実際、抜本的な解決法がないにも関わらず、「なんとかせい!」と解決するように全国民から迫られているわけですから。消費税増税を目指す財務官僚の心の中は、「どうせ高齢化問題を抜本的に解決できないなら、せめて少し延命しつつ自分らが得する次善の手を打とう」ってなものでしょう。

財務官僚の頭をおかしくするほどの解決不能な問題をどのように解決するのか? これについて軍師は、財政や社会保険制度の改革といった正面突破の手ではなく、老人を<準労働力>(都築有©。ようするに手前の造語です)として活用すべしという搦手からの解決法を提案しています。

つまり、「年金や生活保護で生活して」「病気がちだからガンガン医療費を使って」「仕事をせずGDP拡大に寄与しない」老人を――

①都市においては、今後増加するであろうロボット関連の仕事口(操作及び整備助手など)や介護力役による社会保険料納付などの施行により、<準労働者>として活用する。

②地方においては、1人当たり5反の「予備畑」の管理者という<準労働者>として活用する。

――ことにより解決するというアイディアを解決法を提示しているわけです。なお、①は『「自衛隊」無人化計画』(PHP研究所刊)で提案しているもので、新刊では一切触れていません。

ここでいう<準労働力>について手前は、現役世代の労働者のようにガンガン仕事をして稼ぐことがハナから求められていない「フルスペックの労働力に準じた労働力」くらいの意味で使っています。元ネタは新刊にある以下の文章です。

「本構想は、けっして、農業初心者の老人たちに、『わずかな農地に心血をそそいでもらい、そこからできるだけ多くの生産や収益を上げられるようなマーケティングの工夫もしていただく』だとか、『公的年金制度に負担をかけない独立・完結的な生計を理想として目指していただく』だとか、『山の中で、社会インフラから切断された、電気も石油も使わないエコ生活を実践してもらう』ことなどを迫る話じゃございません」(251頁)

つまり、老人を完全な労働力として見るのではなく、「最低ランクの公的老後年金しか受け取れなくとも、餓死や野垂れ死にのおそれがなくなる」(250~251頁)くらいの仕事をしてもらうことについて、いちいち↑のような説明をつけるのが面倒くさいので、ひとまず<準労働力>というレッテルを貼った次第です。

さて、これまでにも関係各所から「高齢化問題解決のため老人に仕事をさせよう!」という意図で、定年延長制以下、様々な提案がなされてきました。しかしいずれの案も、労働力として社会に参画することを期待したもので、「正社員歴のないニート」とか「資力のない独居老人」などを視野にいれたものではありませんでした。それこそ定年延長などは「企業の正社員」だけにスポットを当てた施策であって、そこから漏れた数多くの老人――非正規雇用がこれだけ増えている以上、近い将来、正社員歴のない老人が多数派となることは確実――のことは全く考慮されていません。

加えて、老人を労働力として社会に組み込んでしまうと、どうしても若い現役世代がそこからはじき出されてしまいます。結果、本来高齢者を支えるはずの現役世代がより薄くなるという悪循環を招いてしまう。結局のところ老人に労働力を期待する政策は、あまりスジが良くなさそうだということです。

この点、軍師の提案は、老人を独立活計する労働力としてではなく、<準労働力>として無理なく社会に組み込むことで、30年来非正規雇用を続けてきたようなニート老人であっても、最低限のセーフティネットで餓死や野垂れ死にの心配だけはしないで済む――という未来図を明確に描き出しているわけです。

このように将来多数派になるであろうニート老人までをも包含した高齢化問題解決策は、少なくとも手前が知る範囲では軍師しか提案していません。だからこそ手前は、先日のエントリで「日本一まともな救国策」とブチ上げたんですよ。

ともあれ手前は、韓国は仏像を返還すべきであると思う。
(続く)

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