2013年9月6日金曜日

マッドメン(シーズン5)を2回視聴しての小並感:その1

以下、強烈なネタバレを含むので、シーズン1~5を未見で「これからマッドメンを見よう!」と考えている方は、そのままブラウザの「戻る」をクリックされることをオススメします。

相変わらず面白い。てか凄い。シーズンを重ねるごとに幾何級数的に面白くなる唯一のドラマかも。で、見終わったら何か書かずにはいられなくなったので、以下、手前勝手な小学生並みの感想です。

・今シーズンで一番感心したのは、「話が止まらない」こと。エピソードが一切停滞せず、どんな場面でも常に話が動いているので、重厚ながらもどこか淡々とした絵作りとは対称的に、スピーディーかつエキサイティングな印象を受けた。無駄なシーン、キャラは一つとしてなく、全てのセリフ、動き、視線に意味があるので、その密度はシーズン4以上に濃厚。

・あと、笑いのポイントが異様に多かったことも印象的だった。キャラの過剰さと違和感で笑わせる手法は、シーズンを5つ積み重ねたが故にできたことだろう。ギャグやスカシで安易に笑わせるのではないところに感心した。ただし、ドラマに入り込んでいない人は、「どこが面白いのか?」と思うこと必定。具体的にはep1のペギーとメーガンのやりとりで――

You have to invite Harry
I know, but he really doesn't like him
Really?

――というところで、ペギーが「Really?」という意味、表情、声音、タイミングの絶妙さに笑える人は、多分、ep5~6までは笑いながら見られるはず。

・とはいっても、単純なギャグも多いし、笑いを狙ったとしかいいようのない展開(=ラクシュミ)もある。ポールをああいう風に出すとはねぇ……。

・シーズン全体の基調は完全な「よろめきモノ」(って古いね)。といっても、ドンはシーズン通して一度も浮気しない! シーズン1~3では不倫しまくり、シーズン4でも女を取っ替え引っ替えしていたのが、今シーズンに限ってはメーガン一穴主義を徹底――夢のなかで浮気するも、その浮気相手を絞め殺すくらい――した。というわけで色恋沙汰に走るのは周りの人々で、そのクズっぷりは清々しさを感じるほど。

・つまり今シーズンは、“第一級ロクデナシ”だったドンが、ベティとの結婚に失敗した後、理想の花嫁であるメーガンを手に入れて二度目の人生で夢(=平穏な家庭)を目指すべく、「あるべき夫であり善き人間」になるべく努力するも、様々な理由&障害により挫折するってハナシですよ。てか、手前は↑のように見た。

・で、これを踏まえてep13(最終話)のラストを見ると、(西野カナじゃないけど)その構成の素晴らしさに震えまくり。

・満たされた生活に満たされずに幻を追い、女優への夢をショートカットすべくドンにゴネてCM起用を迫るメーガン。ゴネ得を認めれば二度と“理想の妻”は戻らず、愛のある平穏な家庭は望めない。かといって断ればメーガンがベティと同じように“壊れる”ことは必定。究極の二択の結果、クリエイティブチーフの権限でメーガンをCMに起用するドン。結果、メーガンに対する“真実の愛”は喪われた。結局メーガンも、ドンを利用してのし上がる「有象無象の一人」だったのだ――。

てな、経緯の末、会社で一人、メーガンのテストフィルムを愛おしげな目で見るドン。

CM撮影ではしゃぐメーガンを優しく見守るドン。リハ開始と同時に背を向けると、苦みばしった表情で暗闇へと歩き出す。遠ざかる明るいスタジオ。そこに掛かるナンシー・シナトラの『You Only Live Twice(007は二度死ぬ)』

紳士淑女が集まる高級クラブ。ここでシーズン通して初めて「オールド・ファッションド」を注文する。

高級娼婦らしいブロンドが火を貸してくれと迫り、「Are You alone?」と尋ねる。これに応えて振り向いたところでエンドクレジット。

・テストフィルムのメーガンと遠ざかる明るいスタジオは、このシーズンで求め続けていた「あるべきもの」の象徴で、それに対して敢然と背を向ける。そのうえで、紫煙にまみれた高級クラブでかつての自分(=第一級ロクデナシ)の象徴であった「オールド・ファッションド」を注文する。

・ここに至るまでの苦衷。そうせざるを得なかったドンの心中。「善き人間」になるべく最大限努力したにも関わらず、全く報われることのなかった虚しさ。これを噛み締めながら聴く『You Only Live Twice』――シーズン5のドンの状況を歌いきっているとしかいいようのない歌詞――は格別というしかない。

1967 - James Bond - You only live twice: title sequence

・ドンにとっての“真実の愛”の対象は、全話通して「ブルネットの女性」だった。レイチェルしかりスザンヌしかりメーガンしかり。これは母ちゃん(実母&養母)がブルネットだったからだろう。一方、「ブロンドの女性」は、ベティを筆頭に“上辺の愛”の対象でしかない。で、ブロンドの高級娼婦っぽい女に、「あそこのブルネットの友だちがあなたに興味があるみたいよ」と声をかけられ、女殺しの目で振り向いたドンの明日は……といえば、これはもうメーガンを裏切って浮気街道まっしぐら――しかないわけで、シーズン6はいよいよ不幸になるのだろうなぁ、と期待で胸膨らみまくりですよ。

ともあれ手前は、韓国は仏像を返還すべきであると思う。

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